定年した夫の自己投資が、老後貧乏の原因に!<家計診断>
2018.11.01

人生100年時代と言われる昨今。定年後もできるだけ長く働いて、老後貧乏を避けたいと考えるのは当然です。しかし、新たな仕事を得るためにお金を使いすぎて、生活が回らなくなってしまった人も。

これまで1万人以上の赤字家計を再生してきたファイナンシャルプランナーの横山光昭さんが、貯金をきり崩して暮らしている夫婦の家計を診断しました。

定年
再就職のための講座や飲み会が家計を圧迫…

夫の自己投資が毎月の家計の負担に。「老後貧乏」を避けるには?

【相談者】

田中さん夫妻(仮名・千葉県)
夫(61歳)、妻(62歳)のふたり暮らし。夫は、失業給付を受給しながら職を探し中。妻はパート。

【悩み】

夫の失業給付と妻のパート収入で暮らす田中さん夫妻。
60歳で定年退職した夫は、再就職の意思はあったが希望にかなう職が見つからず、資格取得のために複数の講座に通う日々。人脈を広げるためと称して、頻繁に飲み会へも参加。家計の負担になっているにもかかわらず、まだひとつも資格が取れていません。

老後資金を取り崩している状況に、清掃のパートで働いている妻も我慢の限界です。

【田中さん夫妻の1か月の家計収支】

夫の月収(失業給付) ¥138,000
妻の月収 ¥47,000
収入合計 ¥185,000円
住居費(住宅ローン) ¥0
食費 ¥53,000
電気料金 ¥7,000
水道料金 ¥4,000
ガス料金 ¥5,000
通信費(固定電話、スマホ1台、ガラケー1台) ¥18,000 ←Check1
日用品費 ¥5,000
被服費(クリーニング代含む)¥24,000 ←Check2
交際費 ¥35,000 ←Check2
娯楽費 ¥4,000
教育費 ¥31,000 ←Check3
交通費 ¥8,000
医療費 ¥4,000
小遣い(夫) ¥20,000
小遣い(妻)¥15,000
生命保険料(夫) ¥6,000
生命保険料(妻) ¥5,000
その他(NHK受信料・理美容代など) ¥15,000

支出合計 259,000円
収支 -74,000円

現在の貯蓄 20,000,000円

Check1:面倒くささに負けて節約を放棄

「情報収集や資格取得の勉強にはスマホは必須」と言い、現役時代並みに夫の通信費がかかっています。格安スマホの存在は知っているが、手続きが面倒で放置。

Check2:「人脈のため」と飲み会三昧

「人脈のため」と、カルチャーセンターや講座で知り合った仲間との飲み会や異業種交流会などに積極的に参加する夫。「印象をよくするため」と洋服も新調したがる傾向も。

Check3:通信教育や講座に次々と投資

夫は資格取得のために通信教育を複数受講。「仕事に生かす教養を身につけるべき」と、カルチャースクールにも通ったりしているが具体的な成果はまだありません。

2000万円の貯蓄で老後の生活を何年間支えられる?

【今のまま、毎月7万4000円を貯蓄から補填した場合】

7万4000円×12か月=88万8000円
88万8000円+特別費(年間を通して発生する出費)50万円=年間の補填金額138万8000円
2000万円÷138万8000円=14.4年

約14年で家計がショートすることに!!

【横山さんの改善策】

通信費 8000円 (-1万円)
教育費 6000円 (-2万5000円)
被服費 5000円 (-1万9000円)
交際費 5000円 (-3万円)

合計8万4000円を削減! 毎月1万円の黒字に。

特別費50万円−12万円(年間の黒字分)=38万円(年間の補填金額)
2000万円÷38万円=52.6年

家計を改善することで、老後資金の2000万円で50年以上暮らしていける計算になります。
改善策を詳しく見ていきましょう。

消費・浪費・投資の割合をバランスよく変えて、ゆとりある生活を

夫に働く意思や向上心があるのは、妻にとってうれしいことですが、投資のための費用がかかりすぎていることは見過ごせません。計算すると、このままのペースでは約14年で老後の資金が底をついてしまいます。
田中さん夫妻は持ち家で、住宅ローンの負担がないため、なんとかなるだろうと楽観的にかまえている部分があったのかもしれません。

●格安スマホに切り替え、資格の講座も厳選して

まず、気になるのが通信費。格安スマホに切り替えるだけで1万円ほど削減できます。
手続きが面倒に感じられるかもしれませんが、一度切り替えてしまえば、これまでと変わらない環境で通話や通信ができるので、忘れずにやっておきたいところです。家電量販店の窓口や子どもに相談するなど、すぐに対策していきましょう。

いちばん大きな出費になっているのが、夫の自己投資にかける費用です。早く資格を取得して、仕事を見つけなければと焦る気持ちも理解できますが、同時に複数取り組むことで、ひとつも身についていないことを早く自覚してもらいましょう。
まずは1つずつクリアしてもらえるよう講座を絞れば、教育費を2万5000円も削減できます。

●優先順位を見直して、こづかいの範囲内でやりくりを

また、資格が取れないうちから、「人脈を広げるため」とせっせと飲み会に参加するのは少々勇み足。まずは資格取得のための勉強が最優先です。

飲み会は本当に必要なものを厳選し、こづかいの範囲内でやりくりしてもらうよう、夫婦で話し合いをもつべき。外出のために増えた被服費も同様に、予算を決め、優先順位を見直しましょう。

●定年世代は、消費85%、浪費5%、投資10%が理想の割合

毎月の支出のなかで、消費(生活のために必要なお金)・浪費(ムダ遣いのお金)・投資(将来の自分に役立ちそうなお金)の割合は、ぜひ意識したいところです。

定年世代は、消費85%、浪費5%、投資10%が理想の割合です。現役当時と比べて収入が減ることを考えると、投資にかける割合をきりつめる必要があります。
18万5000円の収入であれば、1万8000円、妻が使う分も考慮すると、だいたい1万3000円くらいと考えるべきでしょう。

なるべく長く働いて少しでも収入を増やすことは老後の生活において重要ですが、そのためにお金をかけすぎてしまうのは本末転倒です。
逆に、なんでもきりつめてしまうのも、かえってストレスが溜まってしまうので注意が必要。予算を決めて楽しみもバランスよく取り入れていきましょう。

現役時代と比べて収入が大幅に減ってしまう定年後の暮らしに備えるために、入念な準備をしておきたいもの。
『定年後の暮らしとお金の基礎知識2019』(監修・横山光昭/扶桑社刊)では、リタイア後のお金の流れと暮らしの手続きをわかりやすく解説しています。ぜひ、参考にしてください。

【監修/横山光昭さん】
家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、マイエフピー代表取締役社長。独自に生み出した「横山式家計再生プログラム」に基づき、これまで1万人以上の赤字家計を再生。家計の盲点を探りながら、抜本的な解決と確実な再生を目指すアドバイスを行う

<イラスト/平井きわ 取材・文/ESSE編集部>

定年後の暮らしとお金の基礎知識2019

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