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家事分担において感じる妻の不満。「平等」にこだわると余計うまくいかない理由

ESSEonline編集部
2021.09.13

よく耳にする「ジェンダー平等」という言葉。社会的・文化的な性によって役割を押しつけたり、それによる差別があってはならず、だれもが平等であるべきだという主張のことです。

その実現がどこまで進んでいるかを測る際には、世界経済フォーラムの評価によるジェンダーギャップ指数がよく使われますが、日本は調査対象となった世界156か国中、なんと120位(2021年度)。主要7か国(G7)では最下位です。
日本の場合、「政治」と「経済(働き方)」の分野における評価が著しく低いのがこの順位に大きく影響しており、その解消は大きな課題となっています。

掃除機と夫婦
男女平等…といえば、家事においては不平等な気がしませんか?(※写真はイメージです。以下同)

じつはこの「ジェンダー不平等」、ある地方新聞が行ったアンケート調査結果では、もっともそれを感じる場面の1位はなんと「家庭生活」でした。女性はとくに「家事の分担」において不平等を感じているという別の調査結果もあります。

そんな家庭内のジェンダー不平等について、『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系)でおなじみの生物学者で『平等バカ~原則平等に縛られる日本社会の異常を問う~』(扶桑社刊)の著者でもある、池田清彦先生にお話を伺いました。

「私ばっかりが家事をしている?」家事分担における男女の不平等さはなぜ生まれるのか

「誤解を恐れずに言うならば、性パターンによる、なにかに対するある程度の向きや不向き、あるいは指向というのは明らかに存在すると私は思っています。たとえば料理や子育てなどは、一般的には女の人のほうが上手でしょ。それは、社会的、また歴史的にそういう役割を与えられてきたせいだと主張する人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。女の人というのは平均値として(決して典型的という意味ではないですよ)、生まれながらにして料理や子育てに向く、なんらかの能力をもっているに違いないのです」

――では、女性は料理や子育てができて当然で、男性に家事は絶対に向かないということでしょうか?

「いやいや、そういうわけではありません。私が言っているのは、あくまでも平均値の話です。だから、女性であっても料理が苦手な人はいるし、男性であっても育児が得意という人はもちろんいます」

――平均値として男性はあまり家事に向かないとしても、できないわけではないですし、女性と同じようにやって当然ではないですか? そもそも、男女は平等のはずですよね?

「そんなの幻想ですよ(笑)。だって、男女に限らず、そもそも人の能力なんて生まれつき不平等じゃないですか。そんなのみんな薄々気づいてるでしょ?」

●単純に家事を半々に分担してもいい結果が出ない理由

洗濯物たたむ――能力の不平等は無視できないということですか?

「たとえば、世の中の平均値に近いタイプの男性と女性の夫婦がいて、家事を平等に半々に分担するとしますよね。平均値であるとすれば、この夫婦は女性のほうが家事は得意だと予想されるので、男性のほうの負担感のほうが高くなります。つまり、能力が不平等なのに無理に平等にすると、結果が不平等になるのです。それに、あまり家事が得意ではない男性がなんとか頑張ってやったとしても、おそらく仕上がりはイマイチでしょう。それを見てイライラしたり、あるいは二度手間になったりするということが起こったりすれば、女性にとっても決していい結果ではないですよね」

――それは能力というより、男性が普段から家事をやっていないからでは…?

「慣れとか経験の差による部分ももちろん多少はあるでしょうが、平均値の男性が生まれ持った家事能力が、平均値の女性のそれより低いことの影響は決して小さくないと私は思いますよ。私も家事がまったくできないわけではないですが、たとえば料理をするときのカミさんの手際のよさを見ていると、ああいう能力は天性だと確信します。ただし、大事なことは、能力的に家事に向かないからと言って、それは男性が家事をやらないことの言いわけにはならないということです。なぜなら、そのような不平等を是正する方法はいくらだってあるからです」

●得意不得意のバランスを考えることが大事

――その是正する方法とはなんですか?

「まずひとつは、システムづくりですね。家庭内で分担の割り振りを、得意不得意のバランスを考えたうえで、6対4とか、7対3くらいにするのも立派なシステムのひとつでしょう。表面的には不平等に見えるかもしれないけれど、それぞれの能力や特性を加味すれば、結果的には平等だと私は思いますよ。そのほうが間違いなく効率がいいし、ぶつかったりケンカすることもなく、家庭も円満になるんじゃないですか。もちろん、男性のほうも女性と同じくらい家事が得意なら半々でもいいし、逆に女性のほうが家事が苦手ならバランスを逆転させればいい。お風呂洗いとか掃除とかいった単純な力仕事は、平均的な男性の方が平均的な女性よりも素早くできると思うので、そういう仕事を男性に任せてバランスをとるというやり方もありますよね。そこらへんはご家庭によってうまく調整すればいいと思います」

お風呂掃除と男性――なるほど。たしかにそのほうがストレスを溜めずにすみそうです。

「不平等の是正には、テクノロジーも貢献します。最近は掃除をやってくれるロボットなど、家事をどんどんラクにする家電がいろいろと開発されていますよね。それを使えば家事が苦手な人も楽になるし、女の人に偏りがちだった家事の負担自体をなくすことだってできます」

――家事を押しつけあってイライラするより、思いきってそういうものを導入するほうが明らかに建設的ですね。

「ジェンダー平等は、平等という形ばかりの風呂敷を広げるだけでは実現しません。大事なのは不平等を『ないもの』にすることではなく、さまざまなシステムづくりやテクノロジーを活用しながら生来の不平等を是正すること。あるべき男の姿やあって当然の女の役割などが存在しないのと同様に、『もともとだれもが平等だ』というのもまた、幻想なのですから」

「平等じゃないのはおかしい」と嘆く前に、男女差ではなく能力差に目を向けて、その夫婦なりの正解を見つけていく――。この機会に夫婦間の「平等」について話し合って、家事の不満を少しずつ減らしていきましょう!

<取材・文/ESSEonline編集部>

●教えてくれた人
【池田清彦(いけだきよひこ)さん】

1947年、東京都生まれ。生物学者。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。
フジテレビ系『ホンマでっか!? TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。
最新刊『平等バカ』(扶桑社刊)が発売中、ほか著書多数

平等バカ

偽りの「公平」から目を背けるな!『ホンマでっか!? TV』でおなじみの生物学者・池田清彦が説く、不平等な現実に向き合う知恵と教養

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