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震災後、夫と実母を相次いで亡くした母。娘として助けたこと

2021.06.12

若松美穂のおいしい生活主婦業のかたわらエッセイストとしても活動する若松美穂さんが、楽しく、豊かに暮らすためのさまざまな工夫をつづります。

東日本大震災を機に、実の母と同居を始めた若松さん。家族だからといって、最初からスムーズにいったわけではないと言います。
同居生活で感じたことを執筆していただきました。

膝に手をおく様子

母と私のドタバタ暮らし~娘の言うことは信用できない~

東日本大震災後、母はずいぶんと気落ちしました。震災前の写真とその後の彼女では、ほんの数か月違うだけなのに、まるで別人のよう。
もともとやせていた体はさらに細くなり、横になって一日を過ごすようになりました。「この人はもう、元気になることはないのだ」と思ったものです。

災害でもそうなじゃくても、大切な人を亡くせば、心がついて行かないのは当り前です。私たちは、母が起き上がるのを待つことしかできませんでした。

それでも、少しずつ動くことのできる時間が長くなり、初めは認知症の祖母の施設や自分自身の病院通い程度ではありましたが、外に出るようになりました。
震災から3、4年後。私は、さらに母に外に出て、人に会う機会をつくってもらおうと考えました。
震災後、父と祖母(自分の母親)を相次いで亡くした母には、体とともに心のケアが必要だと思ったのです。そこで、一緒に外出するだけではなく、私とは別の心理学教室に通うことを勧めました。

ともに暮らし始めてから、私が母に伝えたことのひとつは、彼女が小さな町で暮らすときに必要だった「こうあるべきという姿」「人目や評判を気にしすぎること」は、知り合いが少なく、人口が多い都会では、あまり必要ない…ということでした。
もちろんすべてがマイナスではないのですが、それに縛られて動きが取れなくなる。考え込んで、さらに気力や体力を消耗することは、避けたかったのです。

ただ問題は、「親、夫・妻・子が言うことは、家族の耳や心にすんなり入っていかないもの」ということです。これは、どこの家庭にでもあることで、わが家も同じ。母ものちに教えてくれました。「この子はなにを言っているの?」「どうしてあんなことを言うのだろう」と思っていたと。

だれだって、それまで自分にはない考え方や受け止め方、対応の仕方を耳にしたら、初めは「理解できない」と思うでしょう。それだけではなく、それまでの自分を否定されたように感じることも少なくありません。

ところが年月を重ねるうち、母はこう言うようになりました。
「今日先生がね、あなたが言っていたことと、同じことを言うの(私たちの先生は異なりますが…)」「病院に置いてある、心に関する本を読んだら、あなたが言っていたことが書いてあったわ」「テレビでも似たようなことを言っていたわ」

そうですか…、なにかお力になれればうれしい限りです。一応!? 私も適当に言っていたわけではなく、学んだことをお伝えしていたのですけれどね。
結果として、初めは私をまったく信じていなかったことが、浮き彫りになりました(笑)。

【若松美穂(わかまつみほ)】

お金をかけずにセンスと工夫でおしゃれに暮らすカリスマ主婦読者として、生活情報誌『ESSE』や『サンキュ!』などで紹介され人気者に。2011年、心理カウンセラーの資格を取得。主婦業のかたわら、エッセイストとしての執筆活動のほか、講演、各メディアへの出演など多方面で活躍。夫と娘2人、母親の5人家族。埼玉県在住。公式サイト「“いま”と“みらい”のへや」にて最新情報を更新中

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