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東京のアスファルトからタケノコが!最高の味わいに感動<暮らしっく>

2021.04.17

作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。タケノコが旬の今、ひょんなことから道ばたでタケノコを発見したというエピソードについてつづってもらいました。

第44回「道ばたの草花を食べる」

暮らしっく

●道ばたでタケノコが生えているのを発見

ある日曜日、夫といつもは通らない道を散歩していると、え? えええ?? アスファルトを突き破って何やら角が生えてきているではないか。野生動物のような茶色い毛並みに若草色の頭。こ、これは、タケノコではないか。

生えているタケノコ見ると、建物の外壁に沿って竹垣が青々と美しい。この竹垣の竹の根が地下で広がっていって、アスファルトを突き破って頭を出したようだった。
「あ、タケノコだ!」
と夫が、アスファルトではなく竹垣の土の方にしゃがみこんでいる。
「あ、こっちにも!」
私も見つけた。あるある! あっちにもこっちにも、竹の中に紛れてタケノコがぴょこぴょこと顔をだしているではないか。夫も私も、こういうのを見つけるのが上手い。めざとい二人組である。犬の散歩をしている人も、買い物帰りの女性も興味なさそうにスマホをいじいじしながら通り過ぎていく。

愛媛の実家にはタケノコ山があって毎年山のように掘るから、もはや見飽きている。それに小学校への通学の行き帰りにタケノコを見つけて取ったりもしていた。しかし、都内の道路沿いでタケノコを発見した興奮といったらなかった。地面に這いつくばってかなり変な二人だったに違いない。これ採ってもええのかな? と話していると、この地域に古くから住んでいるというおじいさんがやってきた。
「ああ、これね、竹になっていつも切るの大変だから、ほしかったら持って帰っていいよ」
「え!? いいんですか!!!」
「いいのいいの。お願いしたいくらい」

そう。どの田舎もタケノコを採らないから竹が生えすぎて人が山に入れなくなったり、日光がきれいに当たらなくなり結果山が死んでしまっていると父に聞いたことがあった。だから、春にタケノコをきちんと採ることは土地の整備にもなる。かといって人の山に勝手に入って採るのは絶対ダメなので、一言採ってもいいのか地元の人に聞いてみるといい。案外とありがたがられることもある。

今年は実家のタケノコは猿に食べられて全滅と母に聞いた。まさかの東京から逆輸入するかな。でも、竹垣のタケノコはまだ出始めたばかりでどれも小さい。これでは、皮をむけば人差し指ほどしか残らないだろう。それでも食べたい。今、目の前で東京をサバイブしているこのツワモノどもを食したいじゃないか。

私達は、人目をはばからず、タケノコを手で掘れるとこまで掘って足でキックして折って取って回った。小学生の頃やっていた方法だ。目を光らせると、けっこう大きいのもあるではないか。既に誰かが採った跡もあって、私達以外でも東京サバイブしている連中がいることが頼もしかった。
タケノコ、採ったど~!!!

新聞紙の上にたくさんのタケノコ収穫したタケノコは二人の両腕で抱えるほどになっていた。散歩するとき私達は基本何も持たない。カバンも財布さえも。愛媛の実家なら山で皮をむいて捨てて帰ったりするものだが、ここでそんなことしたら本当に猿みたいである。あ、私帽子かぶってるわ。大きなツバの麦わら帽子をかぶっていたので、その中に入れて何食わぬ顔で持ち帰った。帰り道の二人は終始にやにやしていた。

●採れたてのタケノコを調理!自分たちで見つけた産物だからこそ最高の味わいに

家に帰って、さっそく皮を剥く。クワがあればもっと奥深くから採れたのになと少々悔しくもあったが、とても綺麗なタケノコ。包丁で切り目を入れてばっさばっさとむいていく。ここからは毎年やっていることなので、ちょちょいのちょいだ。寸胴鍋にタケノコを入れ、水と米糠をたっぷりと入れてグラグラとアク抜きをする(家に米糠がない人は米の研ぎ汁でもOK)。1時間ほど煮たら火を止めて、夜まで漬け込めばアクはすっかり取れていた。二人とも疲れて少し昼寝をした。

夜、夫がタケノコを糠の中から出し、洗ってさっそく料理している。

春キャベツやアスパラなどのグリル大きめのタケノコは2つに割り、オイルを塗り母が送ってくれた春キャベツやアスパラと一緒に野菜グリルに。

ごった煮の卵とじ小さいのは、ちょうど高菜といりこと油揚げを炊いていたので、その出汁と中身を小鍋に移してワラビも加えて、ごった煮の卵とじにした。
春の息吹が詰まった晩ごはんが完成だ!

美味しい!! 新鮮な上に小さかったのでアクが全く無い。グリルしたタケノコは歯ごたえと共にヤングコーンのような甘みがある。ごった煮は、なんて優しい味だろう。油揚げといりこの味が染みて、ほっこりする。

何という充実した日曜日。愛媛のタケノコもおいしいけれど、自分たちで見つけた産物は、その収穫の過程も含めて最高の味わいだった。きょろきょろと探してみると面白くて美味しい出会いは転がっているものだなあ。

【高橋久美子さん】

1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。最新刊で初の小説集『ぐるり』(筑摩書房)が発売。旅エッセイ集『旅を栖とす』(KADOKAWA)ほか、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」(ちくま文庫)、など。翻訳絵本「おかあさんはね」(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ

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