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50代になって迷いがなくなった。料理家・飛田和緒さんが実感すること

高城直子
2021.04.05

10年ぶりのエッセイ本『おとなになってはみたけれど』(扶桑社刊)を上梓した料理家の飛田和緒さん(57歳)。なにより食べることが好きだからこそ感じられる季節のうつろいや、ふだんのなにげない生活から見えてきたことを、自然体ながら感性豊かな言葉でつづっています。本のテーマでもある、時間や年齢を重ねてわかった「おとなの暮らし方」について伺いました。

左向き飛田和諸さん
飛田和緒さん

料理家・飛田和緒さんインタビュー。50代、じゅうぶんおとなになった今の暮らし

50代という年齢を迎えて、料理家・飛田さんの仕事観や暮らしについて語ってもらいました。

●50歳がひとつの区切りに。心が軽くなれた

――コンスタントに料理本を出版されている飛田さんですが、最新刊はエッセイ本とのこと。文章を書くのはお好きなのですか?

飛田さん:そんなに好きではないし得意でもないのですが、嫌いでもないというか(笑)。じつは、自分の料理本では料理のキャッチコピーからリード文まで、たいていは自分で書いているんですよ。その流れで、ふだんからなにかあると書く習慣が身についたみたいです。本のお話をいただいて、いくつか日記的に書きためていたものがあったのを思い出し、「せっかくだから」とお受けしました。

――今回の本のテーマについては、どう感じられましたか?

飛田さん:わりと“ストン”ときましたね。とっくに50歳は過ぎて60歳になろうとしているわけだから、「そうよね、もうじゅうぶんおとなだものね」って。私自身、50歳を過ぎた頃からいろいろ思うことがあって、そのあたりをお伝えしたいなと考えていたところだったので、自分にとってもいいテーマだったなと思いました。

――飛田さんにとって、50歳はひとつの区切りだったのですね。

飛田さん:私、子どもを産むのが遅かったから、40代は子育てでわーっとなっちゃって、いろんな変化を感じる暇がなかったんです。それがちょっと一段落して、「あら、結構いい年になっちゃったわ」と気づいたのが50歳あたりでした。もちろん、体はくたくたでしんどくて、「今までみたいに若いつもりでいたら、これからは生活できないな」と思ったのは確かです。でも、それ以上に心が軽くなって、「楽」になれた自分もいました。

――それはどんなところで?

飛田さん:いちばんは、「迷いがなくなった」ところかな。いろんなことをパッと決められるようになって、「あら、おとなになったわ」と思いましたもん(笑)。10年前はまだ、仕事にしても、自分はどんな方向に行けばいいのかと結構悩んだりしていましたしね。娘にも、やきもきばかりしたりしていて…。それが、50歳くらいを境に、「まぁ、もう、しょうがないな」って思えるようになりました。それでもう、いろんなことをぶつぶつ言うのはスパッと止めたというか。

物質的なことでいうと、服や生活のもの、道具なんかを選んだりするのも、ほぼ迷わなくなりました。それまでは、誰かがいいよって言うとすぐ飛びついていたのだけれど、今は「いいって言われたけれど、私には合わないな」とすぐ判断がつくようになったんです。まわりに振り回されない自分でいることで、こんなにも楽になれるとは驚きでした。

――ほかにも、50代を迎えて自分自身に変化はありましたか?

飛田さん:新たになにかを始めたい、やってみたいということに、飛び込めるようになりましたね。一人旅に行き出したのも50歳を過ぎてから。着つけや着物のお直しなどのお稽古ごとも始めました。あと、お菓子づくりも。私、料理家ではあるんですけれど、お菓子とかケーキづくりがずっと苦手だったんです。食べるのは大好きなのに、つくるのは本当にできなくて。それで思いきって、お菓子の先生(小黒きみえさん)に弟子入りさせてもらっちゃいました。もうちょっと若かったら、なんとなく見栄もあって躊躇していただろうけれど、今は素直に「私、できないんです」って言えるようになった。まわりにどう思われるか、という意識がいい意味でなくなってきたんですよね。見栄を張っても、疲れるだけですし。

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おとなになってはみたけれど

“おとな”には十分な年になった今だから思うこと、日々のことを、海辺の家に住む料理家が綴るエッセー集。

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