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71歳一人暮らしで1日1000円生活。ケチでも楽しく豊かな暮らし方

浅野裕見子
2021.03.12

人生100年時代と言われて久しく、自分は何歳まで元気でいられるのか、お金はたりるのか…。そう考える人もいるのではないでしょうか?
シニア向け団地にひとり暮らしをし、『おひとりさまのケチじょうず』『ケチじょうずは捨てじょうず』(ビジネス社刊)を上梓したエッセイストの小笠原洋子さん(71歳)は、いわゆる倹約家ですが、とても充実した日々を送っています。そんな小笠原さんに暮らしを楽しむ知恵をうかがいました。

青い服を着た女性
きれいな白い髪にロイヤルブルーのカーディガンがすてきな小笠原さん。「リサイクルショップで300円だったんですよ!」。賢くおしゃれするコツは「素材のよいものを選ぶこと。いいものに出合えるまでは妥協しません」

1日の生活費は1000円!心豊かにゲーム感覚で暮らす「ケチカロジー」とは?

若い頃から「貯金が大好き」で「ムダが嫌い」。東京郊外の賃貸団地に暮らす小笠原洋子さん(71歳)は「ケチじょうず」を目指して充実した日々を楽しんでいます。
ユーモラスでアイデアフルな、その暮らしぶりを拝見しました。

●寿命は70年だと思ってたのに…

若い頃から京都の画廊、東京の美術館…と、アートにまつわる仕事を続けてきた小笠原さん。昔からの貯金好きで、20代の頃は「1日300円ルール」に挑戦したこともあったのだとか。

「もちろん、そんなルールはあっという間に破綻しました(笑)。それじゃ食べていけませんよね。それで1日1000円に格上げ(?)したんです」

このルールは70代に突入した今も継続中。ただケチケチするのが目的ではありません。充実した節約生活を「ケチカロジー」と名づけ、いかにお金をかけずに心豊かに生きてゆくかを追求しているのです。かつては大好きなアーティストの作品を買ったこともありますし、お金を使うときは使ってきました。

机や陶器など
玄関入って突き当りのデッドスペースにしつらえた「ちょっとコーナー」。アラベスク模様が美しい花台に板を渡し、30代の頃に買った陶芸家・柳原睦夫さんの作品などを飾っています

「若いときから『雇われて働くのは45歳まで』と決めていたんです。やりたいことが山ほどあったから、とにかく45歳までは働いてお金を貯めて、その先はやりたいことを思いきりやろうと」

しかし年を取るにつれ、現実の厳しさに直面します。40代からは個人年金も始めました。死亡推定年齢を70歳として65歳から70歳まで受け取れるように。そして年金が始まる65歳までは、アルバイトでもいいから働こうと決めました。

「それでもどこか、年金がもらえるようになったら安泰だろうと思ってたんですよね。でも受給開始が近づいて、いくらもらえるのか試算してみて唖然としました。これほど少ないとは!」

さらに69歳を迎える頃には
「70になっても死にそうもない(笑)。あれ? 個人年金はあと1年で終わり? そう気づいて慌てました」。

●ますます「ケチ道」を極めることに

ロールブラインド
ガラス戸にはロールブラインドをつけていますが、昼間は全開に。外は雑木林でのぞかれることもない立地ですが、気になるので目隠し代わりに手づくりしました

70代に差し掛かって本格的に「ケチ道」の腕を磨かねば、と一念発起。その様子を「おひとりさまのケチじょうず」という本にまとめたところ、雑誌の取材の申し入れが来るなど話題になりました。

小笠原さんが心がけている一番大切なことは「みじめにならないこと」。1日に使えるお金は1000円ですが、おしゃれだって楽しみます。いえ、1日1000円生活でも「楽しめる」んです!
そんな小笠原さんの暮らしぶりの一端を、ご紹介しましょう。

・セロハンテープは捨てない!

冷蔵庫脇にストックしているセロハンテープ
冷蔵庫脇にストックしているセロハンテープたち。最終的にゴミになるまえに、もうひと働きしてもらう。小さい事でも毎日積み重ねれば効果はあります

買ってきた物についているセロハンテープなどは、はがしたあと、冷蔵庫にセットした透明板に張りつけてとっておきます。生ゴミはスーパーでもらった薄いビニール袋に入れ、水分をしっかり絞ってできるだけ小さくまとめ、この「中古のセロハンテープ」でぎゅっと封をします。

食品のパッケージ
食品のパッケージも捨てません! ラップ代わりに使ったり、切った野菜をちょいと仮置きするのに重宝します。オシャレなシリアルの箱は折りたたんだビニール袋のストッカーに

これを自治体指定のゴミ袋にためるようにすれば、小さな袋でも一杯になるまでに当分かかるほど、ゴミを減らせます。

・果物や野菜は皮ごと・種だって食べます

果物の皮は大抵、食べられます。苦みがあったりして「おいしくない」場合もありますが、栄養たっぷり。ピーマンも種ごと。カボチャの種は周りについた繊維質がおいしいし、硬い種は干してからフライパンで炒るとおいしく食べられます!

・永遠のひと鍋料理!

お鍋を洗わず、毎日具材をたし、少しずつ味を変えながら料理を「リレー」する、それが「永遠のひと鍋」。もとより濃い味つけが苦手なので、調味料はほとんど使いません。

たとえば、
1の鍋:白菜と豚肉をショウガや昆布と煮ます。これを一食分より少し多めにつくっておくのが一日目。
2の鍋:二日目は少し残しておいた「1の鍋」に鶏肉とネギを追加…この調子で少しずつ材料をたし続け、素材に合わせて味つけも少しずつ変えてゆきます。

・今の自分に似合う服を着る!

お金のかかる白髪染めやパーマはナシ。身なりはきちんとしたいから、2か月に一度、格安カットのお店で整えます。服も「顔のそばに白い色を持ってくるなど、白い髪に似合うコーディネートを考えます」。

さすがは長年アートのお仕事をしてきただけあって、小笠原さんは本当におしゃれ!
お兄さんのお下がりのニットをリメイクしたり、リサイクルショップで掘り出し物を見つけたり、上手におしゃれを楽しんでいます。

本やクッション
作家さんの作品集など、好きな本を置いているくつろぎコーナー。シートカバー代わりにしているエスニックな布はもとはスカートだったもの。雑貨やクッションの配置に、美的センスが光ります

「ケチ」というと、なんだかしみったれて、悪いことのように思いがち。ですが、日々の暮らしを丁寧に見つめなおして、いらないものにまでお金をかけていないかどうか見直せば、自然とケチカロジーになれるのかも?
センスよく、日々の暮らしを楽しむ小笠原さんの「知恵の絞り方」を拝見していると、そんな風に思えてくるのです。

<取材・文/浅野裕見子>

●教えてくれた人
【小笠原洋子さん】

1949年、東京都生まれ。大学卒業後、京都にて画廊に勤務。東京に移転後、弥生美術館や竹久夢二美術館で学芸員を務める。退職後はフリーキュレーターや美術エッセイストとしても活躍。主な著書に『おひとりさまのケチじょうず』『ケチじょうずは捨てじょうず』(いずれもビジネス社刊)がある。

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