1. トップ
  2. ライフ

栗ご飯に栗きんとん。とびきりの秋の味覚で自分にご褒美を<暮らしっく>

2020.10.16
  • この記事を
    シェア

作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は栗や松茸といった秋の味覚の楽しさについてつづってくれました。

第31回「あぁ、秋ばんざーい!」

暮らしっく

●栗をむくのは大変だけど、その価値がある

「栗が好き」と言いまくっていたら、栗がどんどん集まってきた。こんなの初めてのことだった。いやあ夢は口に出した方がいいってこういうことだったのか。言ってみるものだ。余っているとことには余っているというのも驚きだった。嬉しすぎて、栗ご飯に、渋皮煮に、栗きんとん。せっせせっせとこさえる栗三昧の十月。至福すぎだ。栗のために仕事も頑張る。栗のためにお腹を空かせて夕飯を待つ。食欲は人を強くするなあ。

たくさんの栗しかし、御存知の通り栗の皮をむくのは一苦労。イガに入って、硬い皮におおわれて、おまけに渋い皮に包まれ、手の届かぬ木の高い所になっているんだもの。種子というのは厳重に守られているんだなと思う。だからこそ栄養価も高いのだ。まず自然の恵みと、食卓にやってくるまでに頑張ってくれた方々に感謝しなければ。そう考えたら、皮をむくのなんて最後の美味しいとこ取りの作業じゃないか。面倒だからこそ美味しいのです。そこまでして食べたいのです。

ボールの中に栗を入れると、そこに沸騰したお湯をかけて皮を柔らかくしながらむく。湯がだんだん適温になって栗を取るときに手湯っぽくなるのも気持ちいい。調べたら他にも簡単で手早いむき方が出てくるんだけれど、私は敢えて包丁で、おばあちゃんや母が夜な夜なやってたのと同じように時間をかけてむく。普段、文章を書くための脳みそばかりを活用しているので、ひたすらに手先を動かして皮をむくのがストレス発散になる。原稿を書き終えて、深夜に静かに栗に向き合う時間は癒やしだ。

●新米で炊いた栗ご飯は最高!

手間暇かけてむいた栗を、半分は栗ご飯にして、もう半分は渋皮をむかずに、そのままコトコトと煮て、渋皮煮に。

ご飯の上にたくさんの栗私は、栗ご飯にもち米を入れる。米2合に対してもち米1合。そうすると、全体がもっちもちの艶々になり、何倍も美味しくなる(もち米は米より長く吸水させないといけないのでご注意! 私は2時間くらい)。味付けは、5cm各の昆布を1枚と、塩を小さじ1入れて炊くだけのシンプルな栗ご飯だ。家はSTAUB鍋や土鍋で炊くが、新米で炊いた栗ご飯は、一気に食べ尽くしてしまうほどの美味しさだった。いつもはおひつに移してから食べるのに、待てない! 熱々を口に放り込む。ああ、秋万歳だ! 

お鍋に渋皮煮さて、そうこうしていると渋皮煮のアクが取れてきたかな(何度か水かえする)。その中でも、皮がむけてしまったものは、保存に適さないので、分けておく。きれいに薄皮に包まれたものは、お砂糖を入れてコトコトと最後の煮込みに。このお砂糖の量も好みなんだよねえ。私は栗本来のおいしさのあるものがいいなと思うので、重量の4割弱の砂糖を何回かに分けて入れて煮込む。

お皿に渋皮煮そして瓶で保存しておけば、一か月は秋のおやつだ。長期保存したい人はある程度ガツンと甘くしないと腐ってしまうのでご用心。

●この秋一番の美味大賞は栗きんとんです

渋皮煮も十分に美味しいのだ。けれど、けれど、さらにさらに美味しいおやつは、栗きんとん! これは、栗に甘みが足りなかった時にもいいだろう。こちらは、蒸し器で栗を40分ほど蒸し「あっつー」と言いながら皮をむく。先程、渋皮煮のときに皮が破れてしまって、よけておいた栗の薄皮をむいてここに一緒にしたり、いやそのまま食べてしまうこともあるし、その時のフィーリングで作っていくのが楽しい。

きんとんは、よくつぶすのと、つぶしすぎないのを作るのがポイント。半分はよくつぶし、もう半分は栗の食感が残るくらいにつぶし混ぜ合わせる。そこに、好みでお砂糖を入れるだけ。ほのかに甘いくらいがベストだと思う。お正月の栗きんとんって、喉が焼けるように甘いけれど、あんなに砂糖を入れなくても美味しいよ。茹で汁が入ってしまうとべちゃっとするので、なるべく茹で汁を布巾でふいて水気が出ないように注意すべし。

栗のお皿に栗きんとんそして、布巾に包んでピンポン玉大に丸め出来上がり! 水分が多い場合は、食べる前にオーブンで表面を焼きましょう。もうね、この秋一番の美味大賞は、栗きんとん。この一口はみんなの努力の結晶なんだなあ。食べ物が口に入るまでのストーリーを思うと奇跡のような一品だ。

栗きんとんは冷蔵庫で保存してもすぐに傷んでしまうので、ペーストを山盛り作って冷凍にしておくと、いつでも丸めて焼けば、あの味にたどり着けますよ!

松茸ご飯秋と言えば…松茸ご飯も食べてしまった。美味しくないわけはないですよねえ。食にかける欲は果てしない。美味しいものは人を元気にする! そして、美味しいものに向かって突き進む真っ直ぐな姿勢を、食欲っていうんやろなあ。

動物も人間も、食べ物が美味しく栄養価も高い秋にこそ、エネルギーを蓄えよう。ここまで今年もよくがんばってきました。少し贅沢をして、体にも心にもご褒美をあげましょう。

【高橋久美子さん】

1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。近著に、詩画集「今夜 凶暴だから わたし」(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」(ちくま文庫)、絵本「赤い金魚と赤いとうがらし」(ミルブックス)など。翻訳絵本「おかあさんはね」(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ

このライターの記事一覧