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家でも外でも足元を快適に。進化しているぞうりと足袋<今日はなにを手に取ろう?>

寿木けい
2020.10.11
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旬の素材を使った毎日の料理や、時季ならではのおいしい食べ方をつぶやくツイッターアカウント、「きょうの140字ごはん」(@140words_recipe)を運営する文筆家の寿木(すずき)けいさん。

使いたいと思う食材や道具、そしてだれかへの贈り物は、四季に導かれるものだそう。
寿木さんから季節のあいさつに代えて、読者の皆さんへ「今日はこれを手に取ってみませんか?」とお誘いします。

幼い子どもを抱えて家事をしていた頃、足を痛めてしまったという寿木さんが見つけたのは、なんと「ぞうり」。
履き心地にハマり、すっかり相棒となったぞうりと、足袋のことを教えてくれました。

愛用シューズは、ぞうりと足袋

足底筋膜炎(そくていきんまくえん)という言葉をご存知だろうか。文字どおり足の底の筋膜が炎症を起こすという、それはそれは痛い症状で、私は4年前に初めて経験した。

整形外科を受診すると、重いものを持ってはだしでフローリングを動き回っていちゃあ、そりゃ当然ですよと指摘された。

布ぞうり
足を守ってくれる、愛用の布ぞうり

●年子の子育てで酷使していたのは…

重いものというは、子どもたち。なんせ当時2歳と1歳の年子ふたりを同時に抱っこしてあやすこともある日々だったから、体を支えていた足がついに悲鳴をあげたのだ。湿布をはって快復を待つことになったが、先生からの指示は「家では常にスリッパを履いてください。でないとくせになって繰り返しますよ」の一点だった。

●ぞうり型ルームシューズとの出合い

フローリングのさらさらした感触が好きだった私が、初めてスリッパを真剣に選び始めた。

底が厚いもの、硬いもの、値段が高めのもの…いろんなルームシューズを試した。なかでもいちばん気に入ったのは「甘橙東京(DAI DAI TOKYO)」の布ぞうりだ。

布ぞうりの厚さ
布からは「薄さ」をイメージするかもしれないけれど、ご覧のように厚みがあり、ふかふか。

このぞうり、鼻緒が中心から左右非対称に付いているので、親指と人差し指のちょうどいい塩梅の部分に鼻緒が来る。もちろん長さは調節可能だ。足を履き物に合わせるのではなく、履き物を足にアジャストするのだ。
体の軸が安定するから、長時間立ったまま家事をしても疲れにくい。ぴったり密着するが、決して窮屈ではない。ぞうりが苦手だという人にこそ、体感してみてほしい。

布ぞうりの鼻緒
鼻緒の位置は自分で調整できる。

布が汗や皮脂を吸い取ってくれるので、真夏でもさらさらと心地良い。汚れたら洗えばいい。

カラーバリエーションとデザインも豊富で、自分のためはもちろん、プレゼントにも喜ばれる。同じ足の形をしている母と姉にも、プレゼントした。

それからもうひとつ。スリッパだとかかとが浮いてパタパタ音がしてしまうが、このぞうりなら静かだ。中津箒の回にも書いたけれど、家の中に流れるラジオや音楽、会話の音をかき消さないことが、もの選びにおける私のこだわりであるらしい。

●足袋を履いて外に出よう

難点は屋外には履いていけないことだ。

そんな悩みを見透かしたように、誕生日に友人がプレゼントしてくれたのが「丸五(MARUGO)」のマジックエアージョグ。地下足袋型のスニーカーで、コハゼ部分はマジックテープで着脱できる。

足袋のつま先
つま先。中には五本指ソックスを履く。

写真をみて、某ブランドのTABIブーツを思い出すファッション好きも多いだろう。

こちらの丸五は倉敷の会社で、創業は1919年。ゴム底のついた地下足袋のパイオニアとして知られている。
プレゼントしてくれた友人曰く、「とってもおすすめなんだけど、履きこなすのは少し難しいかも…ぜひけいさんのセンスで」。

足袋
前重心が取りやすく、長時間履いていても疲れない。止まる、速く歩く、しゃがむ、背伸びをして高いところのものを取る…など動きに合わせて足になじむ。

ある日、初めてのスタジオで料理も撮影も自分でこなさなくてはならない仕事があった。今日履かずにいつ履く? というわけだ。

朝9時から夕方まで、ほぼ休憩なしで走り回った撮影。「お疲れでした」と荷物を抱えて通りに出れば、目の前に立ち飲み屋を発見。普段なら、座りたくて仕方ないはずなのだが、なんと私にはレモンサワーを飲む元気が残っていた。疲れたという感覚がまったくないのだ。キンキンに冷えたサワーと唐揚げのおいしかったこと…!

●明日の自分のために、買う

これはすごい相棒を手に入れたかもしれない──しみじみとこのシューズを眺めてしまった。
もし疲れ果ててタクシーに乗っていたら? 1日がんばって働いたギャラの一部が失われただろう。ユニークな立ち飲み屋の存在を知ることもなかった。ああ、やっぱり歳には勝てないわなんて愚痴っていたかもしれない。

自分の知らない「いいもの」はたくさんある。
気力・体力を充電して明日もがんばるために、私はまだまだ、いいもの探しに貪欲でありたいと思うのだ。

【寿木けい(すずきけい)】

富山県出身。文筆家、家庭料理人。著書に『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』(小学館刊)など。最新刊は、初めての書き下ろし随筆集『閨と厨』(CCCメディアハウス刊)。趣味は読書。好物はカキとマティーニ。
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