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忙しくても子持ちでも一人旅は行ける。大人こそ「素の時間」を大切に

石井絵里
2020.08.07
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海外への一人旅歴は25年以上、海外一人旅回数400回を超える、モード雑誌『SPUR』元編集長のひとりっPこと、福井由美子さん。豊富な経験を基に、女性が、自分のために自由につくる旅を“ひとりっぷ”と名づけ、その指南術を1冊のムックにまとめたのは2017年のこと。「女性が一人でふらっと海外旅行してもいいんだ!」と、多くの女性の心をわしづかみにしました。

今年7月には、スタイリスト・地曳いく子さんとの共著となるスピンオフ本『たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社刊)も登場。今回は「ふたりっぷ(女子二人旅)」がテーマとなっています。

風景
『たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社刊)より

一人旅は素の自分に戻れる時間。自分が本当に好きなものが見えてきます

ここでは新刊発売を記念してインタビューを敢行。前編では、本作が生まれた経緯や、忙しくても旅をするワザについて伺いました。

――過去3作で“女子一人旅”の楽しさをとことんおススメしてきたひとりっPさんですが、今回は、スタイリストの地曳いく子さんとの“ふたりっぷ”がメインテーマです。『ひとりっぷ』のスピンオフ本ならば、ただの二人旅の本ではないのは明らかですが…。

「“ふたりっぷ”は、手配は各自、現地では別行動も多数…と、いわば『ひとりっぷ×2』のスタイル。四六時中一緒じゃなくてよくにいるわけではなく、お互いしたいことをしながら、ときどきジョインするんです。

今回ご一緒したいく子さんは、私が編集者としても、ひとりっぱーとしてもど新人だった25年ぐらい前に、よく編集部にいらしていて。お互い旅好き&ダイバーというのがわかって、当時何度か海外旅行にご一緒したんです。いく子さんは、その頃すでにベテランスタイリストとしてご活躍中のうえに、旅人としてもバリバリ匠の域に達していて、超ぺーぺーだった私は、いく子さんの旅のスタイルに、ひたすら感動&学びを得たことを覚えています。

それが今回、久しぶりに“また一緒に旅に行かない?”という話になり、バンコク&台北をふたりっぷしてきました。そこで改めて感じたのは、自立したひとりっぱー同士がふたりっぷすると、世界の見え方が広がるということ。加えて、“いく子さんって、やっぱりすごい!”ということでした」

●“ふたりっぷ”で、旅先でのスマートな立ち振る舞いを学んだ

女性
ひとりっPこと福井由美子さん

――どんなすごさを体感されたのでしょう。

「『旅先でのスマートな振る舞いってこれか~』ってことですね。私は普段、庶民的な一人旅が多くて。たまに奮発してラグジュアリーなホテルにステイするときも、なんとなく粗相のないように振る舞っているだけなんですよ。それがいく子さんと旅することで、ホテルスタッフになにかお願いするときに、そもそもどういうことならお願いしていいのか、もしくはお願いすべきなのか、チップを渡すスマートなシチュエーションやタイミング、ほかのトラベラーとのコミュニケーションの取り方などがものすごく勉強になりました。どれもガイドブックには書かれていないことばかり!

私は、旅先ではひたすら一人の世界に集中するタイプ。ほかの旅人とはあまりコミュニケートしないのですが、いく子さんは周りのトラベラーに対して、ナチュラルかつ礼儀正しくオープンなんですよ。フレンドリーすぎることもなく、かといって気配りを忘れることもなく…。大人としての振る舞い方に、何度も「なるほど!」と感心。これぞスマートなトラベラー! 自分も見習わなくては、と思いました」

――そもそもひとりっPさんが、女子一人旅に目覚めたきっかけはなんだったのでしょう?

「大学一年生の夏春休みに、友達に誘われてハワイへ1か月間遊びに行ったんです。『知り合いの家に泊まれるから、宿泊費はタダだよ』と言われて、『行く行くー!』と。ちょうど時代も、パッケージツアー中心から個人で手配する旅行へのきり替えが始まり出した頃でした。

そこで滞在先のホストマザーがダイビングのインストラクターをしていて。せっかくだからと私もダイビングのライセンスを取得したらすっかりハマってしまい、その後はダイビングスポットを求めて、世界各地を一人で巡るように。

そのうちダイビングリゾートの近くに、『あれ、遺跡があるじゃん!』とか、逆に『この国に、こんなリゾートがあるんだ!』と、なにやら楽しげな秘境や島が世界にはたくさんあることに気づきました(笑)。ただ、そういうマニアックな場所とは別に、3連休で気軽に行ける近場のアジア旅にも同時進行でハマってしまい、なかでも香港にはもう180回、台湾へは60回ほど出かけています」

●忙しくても、すきま時間に旅行は行ける

――とはいえひとりっPさんは、都内に勤務される会社員です。月曜から金曜までフルタイムで働き、必要があれば残業や土日の出勤も。まとめて休みが取れるのはゴールデンウィークや年末年始と、ごく一般的に働く人たちと、それほど異なったライフスタイルをしているわけではありません。その上で、香港には月イチで通い、時には3泊のロンドン弾丸ひとり旅も厭わない。その時間術はどうしているのでしょうか。

「行きたい国の下調べは徹夜も厭わずやりますね。全然苦じゃない、というか、むしろ楽しくて、気づくと朝、のレベル。旅そのものは、ほとんどの場合、とにかく土日と連休、ときどき有休プラスで週末をフル活用です。深夜早朝便を利用すれば、かなりいろいろなところへ行けます。皆さん、『ロンドンは1週間なきゃ無理』『ヨーロッパなんて遠くて無理』と思っていませんか? 金曜深夜羽田空港発のフライトに乗って、帰りは火曜早朝にロンドンを出発すれば、水曜早朝に羽田へ帰着できます。ロンドンにはほぼ丸3日滞在可能。土日+有給2日で行けるんですよ。3連休+1日休みを取ってもいいし。ロンドンは近いですよー(笑)。

自分で自分に、行きたいこと、やりたいことへの制限をかけてちゃもったいない! 世界は広くて人生は短いんです。ひとりっぷは私の偏愛旅がつまった本ですが、同時に『旅は自分のやりたいスタイルで行ってよし!』というメッセージを込めてもいるんです。パスポートって有効期限中に何回使ってもいいんですよ。だったら、自分の許せる時間のなかで、どんどん出かけないと。日常や日本の常識からかけ離れたモノ・コトに触れて、世界の多様性を体験すると、人生って、グッと奥深いものになるなあと思っています」

――ひとりっぷを25年以上続けてきて、改めてそのすばらしさはどこにありますか?

「だれにも遠慮がいらないところです(笑)。どこへ行くのか、なにを食べるのかから始まって、すべてが自由。自分次第。昨夜は食べすぎたなーと思ったら、朝食は抜きにして昼までホテルで寝転がっていても、だれにも文句を言われないわけです。だって一人旅ですからね。そうするうちに、自分でも気づいていなかった“自分自身”が見えてくるのもおもしろい。

私の場合、予定が読めない仕事でもあるので、出発の確定も、かなりギリギリです。『今週末あいた。前から調べていたあそこに行っちゃおう~!』とかですね。こうした短い休み、さらに長い休みのことも考えて、行きたい場所は5か所ぐらい並行して調べ続けているから、今では心の中で旅計画のお皿を、常に何枚もグルグル回し続けているような状態(笑)。そんな自分のことを、『旅依存症かも』なんて思った時期もありましたけど、いやいや、ゴルフ好きの方なんて、もっと緻密なスケジュールを先の先まで組んでいるじゃないですか、と気づいて、オッケーじゃん! と。

だから私もゴルフ好きならぬ、単なる旅好きの人。ESSEonline読者の方もそうだと思うんですけれども、日常の雑事に囲まれていると、一人で考え事をしたり、素の自分に戻れる時間って、少なくなりますよね。そんなときこそひとりっぷはおすすめ。まだお子さんが小さくても大丈夫。台湾だったら日帰りで行けます。1日あれば思いきり食い倒れができちゃいますよ(笑)。興味があるなら、思い切って出かけてみては。たった一人で異国を歩いてみると、自分が本当に好きなものが見えてくる。それってだれの人生にとっても、かけがえのない時間だと思うんですよね」

本の表紙ひとりっPさんと地曳いく子さんの共著『たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社刊)は、大人女子×2の“ふたりっぷ”がテーマ。二人でともに行った街のレポート、それぞれの愛用のグッズ紹介、二人ならではの旅テクなどがぎっしりつまった一冊です。海外旅行解禁までの予習として、ぜひチェックしてみてください。

<取材・文/石井絵里>

【ひとりっP(福井由美子)さん】

雑誌『SPUR』元編集長。会社員。女性のひとり旅を「ひとりっぷ」と名付けて応援中。おもな渡航先は、香港180回、台湾60回、タイ&シンガポール各40回、サンフランシスコ30回など数知れず。座右の銘は「旅は人生の貯金」、合言葉は「Have a nice ひとりっぷ!」。最新情報はインスタグラム@hi_trip。公式ブログは「今日も世界のどこかでひとりっぷ®