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50代から小さく暮らす。「広い家にこだわるのはぜいたく」と気づいて

藤谷千明
2020.02.27
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不要なものを手放したり、小さな家に住み替えたり…。ライフステージの変化に合わせた「暮らしのダウンサイジング」に注目が集まっています。

1LDKのマンションで一人暮らしをしているブロガーのショコラさんは、60歳を迎えた頃、「自分になにかあったとき、子どもたちに迷惑はかけたくない」と、身の回りのものを減らす「生前整理」ならぬ、「老前整理」を始めました。

そんなショコラさんに、今の暮らしに至った経緯や、“老後”への向き合い方を伺いました。

机とイス
著書が話題のショコラさんにインタビュー

1LDKの住まいを好きになろうと決めた――話題のブロガー・ショコラさんインタビュー

毎月12万円のパート収入でやりくりをしながら、ものを減らしてシンプルに暮らす――そんな生活をつづったブログに注目が集まり、『58歳から日々を大切に小さく暮らす』(すばる舎刊)を出版したショコラさん。
発売されるやいなや、大きな反響を呼び、10万部のベストセラーになっています。

●広い家に引っ越したいと思ったこともあった

――ショコラさんの本やブログは、ショコラさんの子ども世代である30代、40代からも共感の声があがっています。広い家や多い持ち物に慣れていると、生活のサイズをダウンさせることはハードルが高いものですが、ショコラさんは、現在お住まいの1LDKのマンションを購入されたとき、迷いはなかったのでしょうか?

「ここを購入した17年前は、“年をとると賃貸住宅を借りられない”という風潮がありました。マンションの値段も底値と言われていましたし、友人のすすめもあって、思いきって新築を購入しました。“狭すぎる”という後悔した時期もあったんですが、今は満足しています」

ベッドの近くにランプ――マンション購入後、もっと広い住まいに引っ越したいと思ったことはありますか。

「もちろんありました。私は離婚して一人暮らしなのですが、母や息子たち、友人たちが遊びに来ることもあって、“人が泊まれる部屋”が欲しくなったんです。50歳を過ぎた頃にここを売って、同じマンション内の2LDKを購入しようかと考えたこともありました。

でも、そこでハッと“自分はぜいたくな考えをしてるんじゃないか”って気がつきました。息子たちも独立したら頻繁に泊まりにこないだろうし、母も足を悪くしていましたし、“この先だれが泊まりに来るんだろう”と考えて。使わない部屋をもっている意味はないし、それよりも今住んでいるこの部屋のことを好きになろうと思ったんです」

棚と時計――部屋を拝見すると、とてもすっきりしていて、本当に気に入っている家具や雑貨が厳選されています。ものはどのように手放してきましたか?

「会社をやめてから、徐々に減らしてきました。なぜなら、歳をとったら掃除機をかけるのが面倒になって(笑)。体力も落ちてきたし、ものがあるとどかさないといけない。洋服も、もっているものを把握できていると、同じものを買ってしまうこともないので、減らしていきました。

そもそも離婚するときも、嫁入り道具や洋服をほとんど置いて行ったんです。10年近くたって、その家を取り壊すことになったので、息子に『必要なものを取りに来たら』と言われて。でも行ってみたら、流行遅れの服ばかりだし、今の生活に合わないし、案外もっていきたいものはなかった。そういうものだな、と思いました」

掃除機収納
掃除機はカウンター下に収納

●離婚後、「背水の陣」でがむしゃらに働いて

――離婚後は、化粧品会社で正社員として働いていたとのことですが、42歳で主婦からフルタイムの営業職になるのは大変だったのでは。

「元々働くことは好きだったんです。けれど、私が結婚した頃は寿退社が当たり前の時代でした。仕事を続けるなんて考えたこともありませんでした。子どもが小さい頃は、ママ友と内職をやったり、多少手がかからなくなったらパートに出たりして。

化粧品会社の営業は、定時に帰れることもないし、土日も家に仕事を持ち帰ったりして、今でいう“ブラック”な働き方だったかもしれませんが、“私にはこれしか道がない”という想いでやっていました」

――「背水の陣」ですね。

「まさにそうです。まったくの素人から必死で化粧品のことを勉強して、当時は夢にまで仕事のことが出てきました(笑)。でも、実績で評価されるのでモチベーションも上がるし、契約社員から正社員になれましたし、今の私があるのはあの時期があったからこそ。大変でしたが楽しかったですね」

観葉植物――充実した生活を送っていらっしゃいましたが、そこから体調を崩されてしまった。

「上から“所長になってほしい”と言われ、就任したんですが、なにしろ求められることがこれまで以上に増えて、パソコンも苦手だし、私には無理だと悩んでいました。それが52歳くらいかな? ちょうどその頃、めまいで立てなくなって病院に行ったんです。最終的に婦人科にたどり着いたら、子宮がんの手前だった。

病院の先生にも『自分の体をいちばんに考えた方がいいですよ』と言われたこともあって、平社員におろしてもらったんです。当然お給料は下がりますが、病気になってしまってはそれどころではありませんから」

――それで、57歳で退職することになったんですね。

「できれば、年金を貰う60歳までは勤めあげたかったんですけど、大切なのは自分の体。それにまだ50代だったから、60代よりは再就職の可能性もあると考えたんです。

とはいえ退職後の最初の職場は時給950円のパートタイムで、手取りが急激に減ったことに、最初は後悔もありました。会社員時代もずっと節約して暮らしていたけれど、収入に余裕があるのとないのでは、節約に対する心持ちがまったく違う。60歳になって正社員で働いてた頃の年金基金がもらえるようになり、ようやく気持ちもラクになりました」

スマホで写真撮影
60歳から始めたブログ。今ではブログ用の写真撮影も日課

――40代での離婚、再就職から、環境の変化も続いて、今ようやく落ち着いたということですね。

「あの頃は日々のことに精一杯でしたね。先のことなんて考えられなかった。でも、本にも書いたのですが、“どうしようもなくなったら死ねばいい”と思ったら、気持ちがスッと晴れたんです。本当に死にたいわけではなく、そう思うことで、開き直れたのでしょうね」

40代から人生の転機を迎え、苦労もあったからこそ現在があるというショコラさん。そのポジティブさに勇気づけられます。
そんな彼女の、自分の手で生活をダウンサイジングさせ、人生をクロージングしていく、「前向きな生前整理」というべき生き方は、私たちにとってもヒントがいっぱいです。

<撮影/ESSEonline編集部 取材・文/藤谷千明>

【ショコラさん】

60歳だった2016年にブログ「60代一人暮らし 大切にしたいこと」をスタート。小さい暮らしを大切にする姿勢が共感を呼び、月間60万PVの人気ブログに。2019年、著書『58歳から日々を大切に小さく暮らす』(すばる舎刊)を出版