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40代からの人づき合い。「親と子」から「人間と人間」へ

2020.02.17
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仕事、結婚、出産、子育てが、行動範囲や人間関係に大きな影響を及ぼします。さらに40代になってくると、周囲の人々との人間関係は、どのように変化していくのでしょう。

40代女性のリアルな心情を描き話題を呼んでいる漫画『あした死ぬには、』の作者・雁須磨子さんに、自身の経験を踏まえて、40代になってからの親や友人とのつき合い方を聞いてみました。

親を優しく「あんた」と言えるようになった。雁須磨子さんインタビュー

「40を過ぎたあたりから訃報はずいぶん身近になった」
40代になって変化する人間関係(C)雁須磨子/太田出版

●友達をつくりたいときはハードルの高さを確認

――『あした死ぬには、』の主人公である42歳の本奈多子(ほんなさわこ)は、同僚の年下女性や中学時代の同級生、ちょっと年上の会社を辞めた先輩など、さまざまな人との関わりの中で気づきを得ていきます。40代になってから、雁さん自身は人とはどのようにつき合われていますか?

「友達を新たにつくるとき…とくに相手が年下の場合は、積極的に話しかけるようにしています。年下相手だと、遠慮されてしまって距離を近づけにくい。この年齢になると、だれかと仲よくなりたかったら、まずは友達になるまでのハードルの高さに気づかないといけないんだな、と思います。

そして、相手によく思われたい気持ちはあるけれど、まずはそのときそのときを楽しく過ごす、惜しみなくいきたい、というのはありますね」

――年代の違う相手に話しかけるときに、なにに気をつけていますか?

「年齢そのものは重要じゃないと思いますね。私は典型的な二女タイプで、相手がお姉さんっぽい人だと、年下相手でも相手を慕うような態度になっちゃう。年下の人相手でも、年上の人相手でもそうです。

たとえば、主人公の同僚の20代女子、三月(みつき)ちゃんは、お姉さん味のある人なので、もし実際に知り合ったら『へい!』と従ってしまうでしょうね」

●最近の若者は隠さないけれど、すべて隠している

――最近の20代女子ははっきりものを言う、頼りがいのあるタイプが多い気がします。

「若い人と話すととんでもない話をオープンにしてくるのでおもしろいです。インターネットがすでにある環境で育った世代のせいかもしれませんが、隠さない。同時に、すべて隠しているみたいな不思議な感じがあります。
もちろん、年が違うから話せるというのはあるでしょうね。同じ年齢層に交友関係が重なっていないから話せることっていっぱいありますから」

――若い人はSNSのアカウントを複数もつのが常識なので、そういったことも関係していそうです。逆に多子はアカウントの使い分けができなさそうなところに世代を感じました。

「確かに三月ちゃんは何個もアカウントを持っていると思います、6個くらいかな。そして、多子のアカウントは確かに1個しかもっていない。多子とは中学の同級生で大学進学を控えた子どもがいるパート主婦の塔子(とうこ)ちゃんは積極的にはやっていないけど、インスタグラムは見ているといった感じでしょうか」

●40代になると感じる「親も人間だな」という思い

「だってあんたあたしだっていつまで生きてられるかわかんないんだし…」
(C)雁須磨子/太田出版

――塔子には大学進学予定の娘がいるという設定です。40代になると、子どもがそろそろ手離れするという人も増えてきますよね。

「子どもを大学に入れるって、本当にすごいことですよね! お金もかかるし…、お金がかかりますね。親にとっても人生で初めての経験。かつて自分が大学に入ったころとはまた違うでしょうし、親も実際に経験してみて気づいたり学んだりすることがたくさんあると思います」

――一方で、気になるのが親との関係です。漫画に登場する多子の同級生・沙羅は、ニートで母親と二人暮らしですが、そんな生活がずっとは続かないことも感じています。雁さん自身は、40代になってから、親との関係に変化はありましたか。

「40代になってみると、『親も人間だな』となにかにつけて思うようになりました。うちの親は若いときから自分と感覚の近い人たちだったけど、それでも年々、ひとりの人間としてみるようになって、親という感覚が薄れてきています。

このあいだ、親が提出しなければいけない書類を出さなかったと聞いて、母親に対して『あんた、ちゃんとせんといかんよ』と言ったんですよ。母は末っ子気質だから、私がそうやってカッと出ると、怒るわけじゃなく、スッと引いちゃうんですよね」

――先ほどもお話に出た、年齢よりも、個人の資質の面が強く出ていくるということですね。

「年を重ねるほど、そうやって親を叱るというような局面も増えると思います。ただ、『あんた』でも、10代のときと、40代のときでは言い方が違う。10代のときの『あんた』は反発心が強く出た、『あんたなんて他人だ!』みたいなニュアンスでしたが、40代は優しく言えます」

――そうやって親子関係が形を変えると、個人の生き方も変わっていくかもしれません。

「多子も塔子も沙羅も、立場は全然違いますが、だれかによって変わっていかなければならなくなるのは同じ。親との関係もそのひとつですね」

安易なステレオタイプではない、体温の通った登場人物たちが、雁さんの作品の魅力のひとつ。
40代を生きる女性の等身大を描く『あした死ぬには、』は、親しい友人との近況報告をしているような気持ちになれる作品です。

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<取材・文/六原ちず>

【雁須磨子(かりすまこ)さん】

1994年に『SWAYIN’ IN THE AIR』(「蘭丸」/太田出版)にてデビュー。BLから青年誌、女性誌まで幅広く活躍し、読者の熱い支持を集めている。最新刊は『あした死ぬには、』(太田出版刊)第2巻

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