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犬と神社へ。母の書いた絵馬は本物そっくりかも<inubot回覧板>

2020.02.09
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ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inubot。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第19回は、母と犬と一緒に、神社へお参りした冬の日の思い出。

丹生都比売神社へお出かけ。鯉の池や犬みくじ、絵馬を堪能して

1月22日(水)くもりマークを表示していた天気予報に反して、透きとおる水色の晴天に恵まれた。
母親が車の運転をしてくれるというので、私は助手席で膝の上に犬を抱えてシートベルト係、犬の座席です。犬は立ち上がり窓のふちに手をかけて流れる景色を目で追いかけたりしている。

立ち上がり窓のふちに手をかける犬しばらく走っていたら、のそりおもむろに膝の上で腰を落ち着けた。いつもこうだ。そのまま座席兼私にもたれかかって、少し上体を伸ばし窓の縁にあごをのせる。次はゆっくりとしたまばたきを数回繰り返して目をつむるのでしょう?

クルマのミラーにうつる犬
ほら。

犬は左ほほを窓ガラスにぴったり隙間なく寄せているため、外に向いた耳先が窓に当たってぺたりと折り返されていて、やわらかい触り心地を想起させた。

犬の耳が窓で折り返されているぐねぐねとした山道を越えていくと田んぼや畑が広がっていて、高原ではお米や野菜が栽培されている。そこは和歌山県かつらぎ町天野の里、母いわくくトマトがおいしいらしい。
今日はそんな穏やかな天野の地に鎮座している丹生都比売(にうつひめ)神社に、母と犬とお参りにやってきた。

車を降りて周囲に人がいないことを確認してリードを伸ばせば、見晴らしのいい田んぼ沿いのまっすぐな通りを駆けていった。いまだに犬を見て足が速いなぁなんて感心してしまう。

犬と田んぼ沿いの散歩

向こうから走ってくる犬木々の枝葉は目が奪われる深い緑色で、日光浴をしている様子を真似するように、肺いっぱいに澄んだ空気を吸い込んだ。

橋と犬丹生都比売神社には太鼓橋がかかっていて、霜で滑る可能性があるので冬は渡れないようになっているが、季節によっては参拝者も自由に渡ることができる。太鼓橋の下の鏡池が水面に輪橋を映している。山の上は気温も下がるのだろう、所々に氷が張っていた。

所々氷が張っている池
閉じ込められたような紅葉が神秘的だ

池では鯉が泳いでいたのだが、犬はその鯉に気づくとハッ! と目を丸くしていて、そこからはもう夢中になって見入っていた。
鯉が泳ぐ方々へと目線を揺らすが、ただ落ちるのが怖いからか水辺よりもずっと遠い位置で手足にグッと力を入れて、嫌なら行かんとき! と心配になるほど腰が引けている。

そう思いきや突然スッと座りだしてまじまじと観察を始めたのだ! 腰を落ち着けてなにか対象を観察する、犬がとった初めての行動に意表を突かれて感動すら覚えた。ええええと言葉を失いつつ母と顔を見合わせて笑った。

池の前に女性と犬

橋の前で座っている犬

参拝する女性と犬
参拝中もとなりで座ってかしこ

丹生都比売神社にはご神犬として、すずひめ号という紀州犬の女の子がいる。初夏の風のようなすてきな響きの名前に、真っ白な毛並みと紀州犬らしい引き締まった体躯が凛々しい。普段は神社にいないけれども毎月16日には参拝していて、すずひめ号に会いにやってくる方もいるそうだ。

授与所では犬の顔を描き込める絵馬や、犬の容器におみくじが入っている犬みくじが頒布されている。犬みくじは下からおみくじを取り出したあとも置物として部屋に飾っておくと、目があったときに心が休まるよい代物。

犬みくじをなめる犬
犬みくじ

犬みくじと犬

絵馬に願いごとを書く女性と犬
絵馬

犬の輪郭が描かれている絵馬と犬犬の輪郭に顔や表情を自由に書き込むことができる。

母は犬の似顔絵を描こうと犬→絵馬→犬→絵馬と両者を交互に見ながら「犬ちゃん案外つり目やね」なんてあらためての発見をして、ペンが楽しそうに動く。母の描いた絵を見るってあまりない、もしかしたら何十年ぶりではと思うとなにやらうれしい。でき上がった似顔絵を、私は正直かなり似ていると思った。

犬の似顔絵を描いた絵馬と犬境内を遊歩する犬を見ると、祖父や祖母がいた頃は一緒に来たこともあったので、自然とふたりの面影が浮かんだ。さびしくもあるが、胸の奥から身体中を循環するようにあたたかな熱が広がり包み込まれるような気持ちになった。よかった、犬とも一緒に来られてよかった。記憶はお守りになる。

境内を遊歩する犬心身が落ち着くような清々しい余韻のなか帰り道を下っていたら、自販機と小さな無人の休憩スペースがあったので立ち寄って、いろはすを犬と分け合う。

テーブルの上にミネラルウォーター水分補給によって活気が出たのか、午後の紅茶を片手に用事の電話をしている母の足をつかまえてホールドをきめていた。電話は続く。

女性の足をつかむ犬おなかもすいたし帰ろうかと車に乗り込めば、母が助手席の犬を見つめて「きみはどこにいってもマイペースやなあ。次はどこ行く? なにがしたい?」と尋ねていた。

クルマの助手席に犬今年は犬とたくさんお出かけができますように、晴れでも曇天でもいい。

この連載が本『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。

【写真・文/北田瑞絵】

1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営

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庭先に犬が寝ている光景も、寝顔も、鼻から漏れる寝息も、毛並みの触感も、なにひとつ取りこぼさずに覚えていたい──

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