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「僕はいちばん足が遅いんだ」6歳児の告白に51歳の父が立ち上がる!<古泉智浩の養子縁組やってみた>

2020.10.26
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51歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した6歳の長男・うーちゃん、里子の2歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、「いちばん足が遅い」といううーちゃんと古泉さんが「ダッシュ力」を鍛えるお話です。

足が遅いうーちゃん。同じく足が遅くてつらい思いをした古泉さんと「ダッシュ力」の練習です!

6歳の養子の男の子、うーちゃんが言いました。
「僕はいちばん足が遅いんだ」

前からどうやら遅い方で、鬼ごっこの鬼になるとだれも捕まえることができず、鬼の時間がずっと続くと聞いていましたが、まさかビリだったとは。

「ぼくはいちばんあしがおそいんだ」「え……」
思わず二の句が継げず絶句していると、
「ときどきならEくんやMくんにも勝つけど」
取り繕うように、うーちゃんが言いました。

僕も足は極めて遅くて、クラスでビリから2番目くらいで、鬼のままだれも捕まえられないつらさは今でも悲しく情けない記憶として強く残っています。子どもが味わう地獄のひとつではないでしょうか。
これからうーちゃんが小学校に入ったらさらに体力や運動神経的な、要するにフィジカルな問題で傷つくこともあると容易に想像できます。

僕が露骨に動揺したせいで、うーちゃんに取り繕うようなことを言わせてしまいました。

●足が遅いなら、ちょっとでも多く練習して「ダッシュ力」を鍛えるのみ!

ここ最近、テレビなどで見聞きするのは、「子どもの長所を伸ばす」ということです。短所を克服するのではなく、長所を伸ばすことで、自信がついてそのうち短所も克服できると言うのです。

それに対して異を唱えるつもりはありませんが、短所があまりにきつすぎる場合はちょっとくらいフォローすべきではないかと思うのです。せめてビリではなく、下から5番目くらい…。真ん中までとは言わないまでも、ビリはとにかく避けたいわけです。
長所を伸ばして短所を克服する子は、ビリとかビリにギリみたいな子…ではないんじゃないかと疑っています。

うーちゃんは、ときどき僕と一緒にランニングをしていて、最長では5kmも走ったことがあります。ゆっくりペースですが、僕が6歳のときには考えられない距離です(僕は1kmも走ったことがなかったです)。

しかし保育園にはマラソン大会などありません。かけっこや鬼ごっこで足の速さを競います。問題となっているのは短距離走、ダッシュ力です。
なんら練習せずとも天然で素早く走る才能のある子もいますが、僕やうーちゃんはちょっとでも多く練習して身につけるよりないわけです。

●ストップウォッチを用意してダッシュの練習。…でもこれは何メートル?

そこで、ストップウォッチを購入しました。僕の母校であり、うーちゃんが来年の春に入学予定の小学校のグラウンドで50mのタイムを計って、練習を重ねることでタイムを縮めることを楽しんでほしいと思いました。

ストップウォッチが届いた日の夕方、保育園から帰ったうーちゃんと小学校のグラウンドに向かいました。ところが本人は、おばあちゃんのスマホを持ってポケモンGOをやりたがるので困ります。この季節、すっかり日が短くなって、ポケモンをしていたらあっという間に真っ暗になってしまいます。

「ダメだよ、ダッシュの練習が終わってからだよ」
ダッシュやストップウォッチと言われても、うーちゃんにはなんのことやら分からないので、分かっているポケモンに興味が向くのは当然です。

「もうすぐ着くから、ほら見えて来た、あそこだよ」
なんとか小学校のグラウンドに到着する頃には夕暮れです。さて、50m走ってみようとするのですが、どこからどこまでが50mなのか全然分かりません。

「50mってどこからどこ?」かつて僕が通っていたころは、ロープが地面にはってあって直線が50mでした。確か、1周250mだったような気がします。しかし、今はよく分からない線が引いてあるだけなので、まず僕が引いてある線から線まで走ってタイムを計ることにしました。

「よーい、どん!」
ストップウォッチのスタートボタンを押して、ゴールの線に着いたところでストップを押します。すると、7秒5。よし、これは50mではない。
情けない話ですが、僕の小学生のときの最速が8秒5くらいだったので、そんなタイムで僕が50m走れるわけがありません。40mくらいでしょうか。先生を呼んできて、ここが何メートルなのか教えてもらいたかったのですが、先生に迷惑をかけるわけにはいきません。

●走るうーちゃんと古泉さん。うーちゃんはストップウォッチに夢中です

仕方ないので、そのよく分からない距離で走る練習をして、どのくらいタイムが縮むのか測ってみるしかありません。

うーちゃんがスタート地点に立って、じゃいくよと言うと、なんと両手を地面につけるクラウチングスタートしようとするので驚きました。おそらく立ったまま走った方が速いと思うのだけど、本人が楽しんでやるのがいちばんです。

「がんばれー」「よーい、どん」
僕がストップウォッチを持って、うーちゃんに並走して、ゴールの地点でストップを押します。11秒55。6歳児の速さとしてどうなのか、という以前に距離が分からないのでまったく評価のポイントがわかりません。

「じゃあ、もう一回さっきのところに戻ってみよう。今度は手足を大きく振って走ってごらん」
ここで、タイムが縮まれば練習の成果としてモチベーションも上がるはずです。2回目は11秒77。少し遅くなってしまいました。

「僕もやりたい」
うーちゃんがストップウォッチを操作したいと言い出しました。

「ここを押してスタートして、ゴールのときにここを押すんだよ」
そうしてうーちゃんが3本目を走りました。ところがボタンが押されておらず、ゼロのままです。

「ストップウォッチ見ないでー」「1周走りたい」
1周はもはやダッシュの練習ではなく、タイムの測定も基準がますます不明です。しかし本人がやりたいと言うなら仕方がないのです。1周は55秒くらいで、しかも走っている最中にストップウォッチを何度も見るので速く走れません。

●速く走る秘訣はもしかして…服装!?

夕方で寒かったので、上着を着たまま走っていましたが、何本も走っていると暑くなります。上着を脱いで直線を走ったら、なんと10秒77でした。どうしたことでしょう。それほどまでに上着がじゃまをしていたのでしょうか。

僕も直線を10本走って汗だくになりました。最初はスピードに足が置いて行かれて前のめりに倒れそうになったので、あまりスピードを上げないように変な加減をして走りました。なにしろ50過ぎのおじさんというかおじいさんに近い年齢なので、転んでけがでもしようものなら回復に何週間もかかります。

距離が不明、自分でストップウォッチを持って走る、1周走るなど意図とはかなり違ったものになりましたが、走ることはまったくいやがっていなくて、充分体を動かすことができました。
帰りはポケモンGOをしながら遠回りしていたら、あたりは真っ暗で完全に夜、汗が冷えてすっかり寒くなってしまいました。

50mを測定するために、メジャーを買わないといけないかと思ったら、調べるとスマホのアプリでどうやら測定できそうです。まだ初回を終えたばかりのダッシュ練習の模様はまた近々レポートさせていただきます!

【古泉智浩さん】

漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69)をチェック!

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