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子どもの「境界知能」問題とは。「なぜか生きづらい」の背景に潜むもの

ESSEonline編集部
2020.09.13
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「境界知能」という言葉をご存知でしょうか? 自分の子どもが「勉強しても点数につながらない」「コミュニケーションが苦手」「なぜか不器用」などといった生きにくさを抱えているものの、その理由がよくわからない場合。もしかすると境界知能が原因となっている可能性もあります。

57万部超の大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の著者として知られる児童精神科医の宮口幸治さんに、子どもの境界知能について解説してもらいました。

教室に机とイス
課題があるのに支援されない「境界知能」の子どもたち

宮口幸治さんインタビュー。子どもが「勉強が苦手」「やる気がない」…その理由は、境界知能かもしれない

知的障害や発達障害をもつわけではなく、一見普通の子に見えるのに、なにかしらの問題行動を起こしやすい子どもたち。その問題行動の裏には、じつは「境界知能」が潜んでいる可能性もあるようです。

「『知的障害』の基準はIQ69以下を指しますが、『境界知能』はだいたいIQ70~84ほど。境界知能の子どもたちは、一般的に低い学習パフォーマンスを示すものの、知的障害とは認識されていないので、『勉強が苦手』『やる気がない』『さぼっている』というような誤解を受けることが多いです。また、勉強だけでなく、運動やコミュニケーションが苦手というケースも少なくありません」

●課題があるのに支援されない「境界知能」の子どもたち

なぜ、なにかしらの課題があるにもかかわらず、支援がなされていないのか。その理由について、宮口先生はこう語ります。

「知的障害や発達障害だと診断されれば、特別支援の対象になりますが、境界知能の子どもたちは、まさにボーダーなので支援の対象外です。しかし、支援しなくていいのかというとそういうわけではありません。境界知能の人たちは、知的障害の人たちと同様に、かなりしんどい思いをしていることが多いです」

また、子ども自身ももちろんですが、多くの学校や家庭で、その対処法について悩んでいるケースも少なくないようです。

「現在、多くの学校では、子どもの発達や学習の遅れ、発達障害、粗暴行為、親の不適切養育などいろんな課題が山積みとなり、学校の先生たちはいつも奮闘されておられます。また、保護者の方も目の前の不器用な子どもに対して、『どう対応したらよいのだろうか』と思い悩むことも多いのではないでしょうか。もしかすると、その要因の一端には、『境界知能』が隠れている可能性もあります」

●経済面や就労面などで、大人になったあとにも影響が

では、境界知能の人はどのくらいいるのか…というと、なんと人口の約14%が境界知能に相当するとか。

「学校で1クラスの人数が35名としたら、約5人は境界知能に該当することになります。大人になってからも社会参加しづらい場面があったり、経済面や就労面などさまざまな領域での支援の必要性も生じてきます。それにもかかわらず、周囲から境界知能が原因で課題が発生していることに気づかれにくいので、支援を受けることはほとんどありません」

●境界知能の子どもが起こしやすい、3つの課題とは?

成人後の人生にも関係してくるなか、境界知能をもつ子どもたちは、どんな特徴がみられるのでしょうか。宮口先生いわく、境界知能の子どもたちには、ある3つの課題が起こりやすいそうです。

「分類すると、大きく次の3つの課題に分かれます。まず1つ目は『社会面』の課題です。これは、考え方、感情、行動のいずれか、もしくは複数がうまくいかず、社会活動においてなにかしら課題が生じている場合です。2つ目は、集中できない、勉強についていけないなど、『学習面』の課題が生じているケースですね。あと3つ目には、運動が苦手だったり、手先が不器用だったりといった『身体面』の課題が挙げられます。境界知能であればこういった特徴がみられるかもしれません」

●キレて暴れるのを止めるだけでは、効果的な支援にはならない

境界知能の子どもがこれらの課題につながる場合、その行動の裏には様々な背景が隠れていることが多いのだとか。たとえば「すぐにキレて暴れる。何度言い聞かせても直らない」という場合であっても、その背景を知ることで、対処法も変わってくるというのです。

「境界知能の子どもは、勉強やコミュニケーション、運動などで、なにかしら苦手な分野をもちやすく、それが原因となって、自分の中での自信のなさを生み、被害的な思考に陥ってしまうことがあります。その結果、なかには、他人からなにかされるとすぐに『バカにされた』という考えに至ってしまう子が出てきてしまう。これが社会面における『考え方』の課題ですね。それが土台となって、怒りという『感情』が生まれ、キレて暴れるという行動につながっていることも考えられます。どの段階に課題があるかを知ることが大切で、一律に暴れることを止めるだけでは、効果的な支援にはつながりません」

そこで、なによりも大切なのは、子どもの出す困っているサインを見逃さないということ。

「子どもたちは、さまざまなサインを大人に対して発信し続けています。しかし、とくに境界知能の子どもたちの出すサインは、気づかれにくい傾向があるため、『面倒な子』『不真面目な子』としてとらえられるだけに終わってしまいます。こうしたサインをいかに見逃さずにキャッチして子どもたちを支援していくかが重要になっていきますね」

宮口さんの最新刊『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社刊)には、境界知能をはじめ、生きづらい子どもたちに対する具体的な対応策について、コミック形式でわかりやすく解説しています。出版社のページから試し読みも可能。ぜひチェックを。

<取材・文/ESSEonline編集部>

●教えてくれた人
【宮口幸治さん】

立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG‐TR学会」を主宰。医学博士、臨床心理士。

境界知能とグレーゾーンの子どもたち

50万部超の大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の著者による生きづらい子どもたちを救う“具体的な対応策”

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