日がな一日トトロを見たがる2歳児。リモコン片手に食卓を急襲<古泉智浩の養子縁組やってみた>
2019.12.02

50歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した長男・うーちゃん、里子の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回の主役は、繰り返し『となりのトトロ』を見たがる2歳のぽんこちゃん。あなたにも同じような経験がありませんか?

日々繰り返されるトトロ視聴の日々。妹のためにテレビをゆずるお兄ちゃんは偉い!

今5歳のうーちゃんが2歳のとき、一時期『となりのトトロ』を毎日見たがって、それこそ100回くらい見たのですが、2歳のぽんこちゃんが今その状態で朝も昼も夜もトトロを見たがっています。まず朝起きてベビーベッドから床に降りるとぼくの部屋にやってきます。

まだドアノブは上手にあけられないのでドアの前で「あけてー、あけてーよー」とドアノブをガチャガチャさせながら言います。

ぼくは明け方にトイレに行くことがたびたびあるのですが、その際、部屋のドアを薄くあけたままにすることにしました。そうしておけば、ぽんこちゃんにたたき起こされずに済みます。うっかり忘れて閉めて寝てしまうことが多いのですが。 

あけてー「トトロみる!」

部屋に入れると開口一番『となりのトトロ』を見たいと訴えます。うーちゃんの2歳の誕生日に購入した『となりのトトロ』のブルーレイディスクは見てもせいぜい2~3回だろうと思っていたのですが、こんなに数百回も毎日再生することになるとは思いませんでした。

「はいはい、それじゃあちょっとだけだよ」

そう言って再生しながら寝かせて、オムツを替えて、パジャマを脱がせて肌着に手を突っ込んで体中にワセリンを塗りたくり、洋服を着替えさせます。ぽんこちゃんのいいところは、ちょっとだけでも見せると気が済むところです。

「トトロおしまい。リビングに行ってご飯食べよう」
「うん」

トトロ好きであると同時に食いしん坊でもあるので、素直に応じてリビングに向かってくれます。

幼児は我慢がそもそもできないといいます。もうちょっと分別がつくまでは我慢をさせようとしても無理なので、なるべく欲求に応えるようにして、その分愛着が育まれればいいなと思って応じています。

実際、今5歳のうーちゃんはいまだにイヤイヤ期のような側面もありますが、それでも分別はあり、交換条件や少し厳しい言い方で行動を抑えてくれます。
それでもよそのご家庭に比べると夕食時は食卓につかずオモチャで遊びっぱなしなど、かなりやりたい放題で王様のような暮らしをしていますが。

リモコン
ぼくが夕食をとっているときにぽんこちゃんが『となりのトトロ』を見たがったこともあります。「ちょっと待ってて食べ終わるまで」と無視しているとぽんこちゃんがリビングから出て行きました。
すぐに戻って来たと思うと、その手にはぼくの部屋のブルーレイプレイヤーのリモコンが握られています。それで『となりのトトロ』を再生しろと言うのです。
しかしリモコンだけあってもリビングでは見ることができません。そうこうしているうちにぼくの食事が終わりました。こんなときはおいしい料理を食べてもさっぱり味の印象が残りません。

そうしてぼくの部屋に行こうと廊下に出るとぽんこちゃんがリモコンを持っていません。
「ぽんこちゃん、リモコンさっき持って来たでしょ。あれがないとパパの部屋でトトロ見れないよ。リモコン持って来て」

そんなややこしい言葉、通じないだろうと思いながらもダメもとで言ってみました。するとぽんこちゃんはリビングに戻ってしっかりリモコンを持って現れました。びっくりしました。どこまで通じているのでしょう?

そして寝る時間まで『となりのトトロ』を見ます。画面に現れる人や物を指さしていちいち「これは?」と聞きます。

これは?

「これは?」
「サツキちゃん」
「これは?」
「メイちゃん」
「これは?」
「おばあちゃん」

複数の人が同じ画面に映っているとだれのことを指さしているのかよく分かりません。

「これは?」
「カンタくん」
「これは?」
「お父さん」
「あ! トトロだ!」
「トトロだね」
トトロは自分で言いたいようです。

メイちゃんが小さいトトロを追いかけてケヤキの木の根元の穴に落ちて目を回すシーンがあります。その後、シャキッとするために首を左右にふるのですが、ぽんこちゃんも一緒に顔を左右に振ります。

クライマックスでサツキちゃんがネコバスに乗って森や田んぼを突っ走り、商店の前を通り過ぎるとき、ネコバスに向かって犬が吠えます。

「わんわんだ! わんわんわんわんわんわん」

その後、ネコバスは電線を渡って行くのですが、その間もしばらく「わんわんわんわん」と犬のマネを続けます。

わんわんこうした、ぽんこちゃんの『となりのトトロ』生活で割を食っているのが、うーちゃんです。

「ぽんこちゃんはズルいよね」

自分だけ好き放題見ているせいで、うーちゃんはぽんこちゃんが寝るまでぼくの部屋でテレビを見ることができません。ぽんこちゃんが寝た後で、おばあちゃんの寝る支度ができるまでの時間、録画した『仮面ライダー01』や『騎士竜戦隊リュウソウジャー』を見ます。それも見れる日と見れない日があります。もうちょっとぽんこちゃんが大きくなったら代わりばんこで見ようね。

【古泉智浩さん】
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69)をチェック!

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