家事育児の分担が当然の理由。いま学びたい北欧の考え方

世界幸福度ランキングの上位にランクインする北欧の国々。共働きが当然で、子育てに男女差もない生き方は、共働き世帯が増えている日本人にとって大いに学ぶところがあります。

ここでは4月4日に開催された、資生堂のベビースキンケアブランド「Mommy Me」発売を記念した、北欧の子育てと暮らしに関するトークショーの様子をレポート。
話し手は、北欧人のパートナーと国際結婚し、北欧と日本の両国の文化に精通し、現在子育て真っ最中のルミコ・ハーモニーさん、イエンス・ペーテルセンさんのお二人です。

欧の子育てと暮らしに関するトークショーの話し手
北欧に根づく子育ての文化とは?

共働きで、妻も夫も育児するのが当たり前。北欧の暮らし方や幸せ観とは

●子育ての協力体制「共働きは当たり前」

日本では「ワンオペ育児」が問題視されていますが、北欧では夫も妻も子育てにおいてはフェアな関係。

「北欧の人にとって共働きは当たり前という感覚で、お互いの仕事の都合を相談し合って送り迎えをしています。私が夜や週末に仕事が入ったときも、夫は快く送り出してくれます」とルミコさん。
ルミコさんの夫はそんな時間を、「子どもにフィンランド語を教えるいい機会」だと考えており、お互いどちらが子守を担当するかのなすりつけ合いもないそう。

「彼がそういう協力態勢なので、普段は私ができることを極力やるようにして、夫のキャリアも応援したいと思っています。朝2往復で保育園へ送って、お迎えも行くこともありますが、不満はありません。じつは夫とケンカをしたことがこれまで一度もないのです。相手を尊重するという考えが北欧人にはあるのかなと思っています」(ルミコさん)

イエンスさんも、「子育てと家事に関して、どちらかが『やるべき』という考えはまったくありません」とうなずきます。

「お互いにフルタイムで仕事を持って働いていることもあり、時間も労力も50:50であるべきだという考えがベースにあります。私たちの子どもが生まれてからの育児休暇も半分に分けて、半年ずつ休んだのもそういった考えがあったからです」

イエンスさんの妻は夜遅い仕事なので、朝はおもに妻が子育てを担当し、保育園へ送っています。イエンスさんは毎日夕方頃にお迎えに行って、息子と夕食を食べてお風呂に入って寝かしつけ。

「イレギュラーに役割を交代することもあります。そんなときも、自分は『朝の時間はこれが大変なんだ』と発見がありますし、妻も『夜にどんなチャレンジがあるか』を実感できるので、お互いに理解が深まります」(イエンスさん)

●北欧と日本のライフスタイルの違い

欧の子育てと暮らしに関するトークショーの様子ルミコさんとイエンスさんが強く共感するのは、「北欧人にとっては、なによりもファミリーがいちばん大事」ということ。

「家族を大切にするという思想は非常に強いですね。私はもともと休みの日には予定をつめ込むタイプだったのですが、『10個の予定を3個にしても、充実度は変わらないんじゃないの?』と夫に指摘されて目からうろこが落ちました。予定を入れたりイベントに行ったりすることで、なにかを得た気になりがちですが、忙しいとそれだけ子どもを急かしたりしてしまい、楽しむことがおろそかになっていたかもしれません」とルミコさん。

フィンランド人は、今この時間が幸せかどうかを大切にするので、家族と過ごす時間を全力で楽しもうとするのが特徴といいます。

「北欧の家庭全般に言えることだと思いますが、まずテレビを見ながら家族で食事をすることは考えられません。北欧人にとって、家族で囲む食卓とティータイムはなによりもプライスレスで、人生の大きな楽しみの一つなのです」(ルミコさん)

フィンランド語にはMiksi(ミクシ)という言葉があり、英語のWhy、日本語のナゼに該当しますが、この言葉が家族の会話でよく使われるそう。

「子どもが『○○があって、□□だったの』と言えば、『どうして? どうしてそう思ったの?』と返す感じで、子どもの言いたいことに時間をかけてしっかりと耳を傾けるようなイメージです。私は夫と出会うまで、バタバタとなにかに追われるような生活をしていたのですが、こういう考え方に触れたことで、その瞬間その瞬間を大切に生きるべきだ、ということに気づくことができました」(ルミコさん)

同じくスウェーデン語のFIKA(フィーカ)という言葉も、北欧の人の幸せ観を表しているそう。

イエンスさんによると「コーヒーや紅茶を飲んで、お菓子をつまみながら休憩することを指します。朝ご飯と昼ご飯の間に午前中のFIKA、昼ご飯と夜ご飯の間の午後のFIKA、あと最後に寝る前の夜のFIKAもあります。家でも、カフェでも、会社でもFIKAという休憩を必ず挟むんです」とのこと。

「私の実家においてもこの文化はとても重要で、週末は家族でFIKAをするため、当日の朝にお菓子の準備をすることから始まります。実家の裏手に森があって、そこに家族みんなでベリーを摘みに行き、帰ったらブルーベリーマフィンをつくって、午後や夜のFIKAで楽しむ、みたいなことが当たり前でした。自然が厳しいからこそ、自然と共生する、という感覚でしょうか。そういった考え方だからこそ、北欧ではオーガニックがスタンダードなのかもしれません。日常生活でも自然を大事にする、それはつまり、過度なものよりシンプルで上質なものを求めることに繋がっていて、今も私の根底にある考え方です」(イエンスさん)

●ものを大切にするということ、そしてものより大切なこととは?

北欧の文化といえば、シンプルなインテリアが挙げられます。この背景には「LESS IS MORE」という考え方がある、とルミコさん。

「アメリカや日本は『MORE AND MORE』思想ですね。文字通り、多ければ多いほどいいという思想です。子どもにはお稽古ごともたくさんやらせたい、子どものためにもっといい環境を、もっといいものを…と、貪欲に求めすぎているように感じます。一方フィンランドでは、『LESS IS MORE』という考え方です。つまり少なければ少ないほど豊かになるという正反対の考えです」

たとえば北欧では、家をゼロからつくる人も珍しくないといいます。

「友人の家に招待されて、すてきだね~と話すと、『おじいちゃんがつくったの』とか言われることもザラにあります。そしてそれも、ずっと何年もDIYしながら手直しして住んでいくのが当たり前なのです。高い安いという問題ではなく、ものを大事にする精神にはいつも感心してしまいますね」(ルミコさん)

なんとイエンスさんの母方の実家も、やはり祖父による手づくり。

「北欧人は手づくりが大好きで、祖母も母もいつも手芸をしているイメージがありますね。若者にも同じような文化が根づいていて、そういった趣味をもつ人が今もたくさんいますよ。北欧には、ものよりも心の豊かさを重視する傾向があるので、友人にあげるプレゼントも手づくりのものだったりします。これも相手のことを考えながら手づくりをして、温かみのあるギフトを贈りたいという想いからですね」(イエンスさん)

●北欧から学べる育児で大切なこと

北欧の考え方や文化を、日本ではどのように取り入れるといいのでしょうか?

「まずは先ほど話したFIKAの休憩をみなさんにもぜひ取り入れてほしいですね! 時間に余裕をもつことは、心の余裕にも繋がりますよ」とイエンスさんは言います。

またイエンスさんが実践しているのは、子育てに対する考え方を少し変えること。

「子育ては確かに大変で、自分の時間がない、趣味にも没頭できない、友だちに会える時間もない…と、ついイライラしてしまいます。そんなときは、子育てを仕事や義務ではなく、ちょっとした趣味のような感覚で捉えるようにしています。子育ては趣味、そして子どもは友だち。子どもに自分の趣味を紹介して理解してもらうことができれば、自分の友だちと一緒に時間を過ごすことと同じじゃないですか。極端かもしれませんが、子育ては長く続くものですから、私はそういう考えで、毎日の子育てを楽しんでいます」(イエンスさん)

ルミコさんも「『こうあるべき』にとらわれず、がんばりすぎないことでしょうか」と提案します。

「たとえば日本では、子どものために栄養を考えてたくさんの料理を手づくりすべき! という考えが根強くありますが、北欧では、普段の食事はそんなに豪華なものは食べません。つくっても大体ワンプレートで、とてもシンプル。3人の子育ては毎日が戦争なので、私はそのあたりのハードルを高く設定しすぎないようにして、できるだけ子どもの目を見て話をしたり、真正面から接することができるような余裕をもつように心がけています」(ルミコさん)

<取材・文/ESSEonline編集部>

【ルミコ・ハーモニーさん】
フィンランド人の夫との間に6歳5歳3歳の子どもがいるワーキングママ。3児出産後、海外の多様な考え方に触れ、アーティストとして独立し、NPO法人を設立。北欧コンサルタントとしても幅広く活躍。2016年にはワーママオブザイヤーを受賞

【イエンス・ペーテルセンさん】
日本在住歴12年のスウェーデン人。日本人の妻との間に、2015年に長男が生まれ、7か月間育児休暇取得。スウェーデンと日本での父親の子育て、育児、育児休暇、ワークライフバランスのトークイベントに登壇するなどの活動を行う

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