毎日の料理がしんどい人に、プロの料理家が伝えたいこと
ESSEonline編集部
2019.06.21

共働きの家庭が増え、夫婦や親子間で家事シェアする価値観が一般的になりつつあります。しかし一方で、従来のキッチンでは動線が悪く、一緒に料理しようとすると逆に効率が下がるという悩みも。

SNSや書籍を通じて、スープのレシピを発信している有賀薫さんは、ご自宅のリノベーションを機に、テーブルにキッチン機能を組み合わせた「ミングル」を考えました。そこには、「昭和から続くしがらみにまみれたキッチンを変え、家事のハードルを下げたい」という思いがありました。

有賀薫さん
現代の家事のハードルを下げたい、と話す有賀さん
ここでは有賀さん自身の家事や子育ての経験も伺いつつ、これからの家庭料理について考えます。

家庭料理のよさとは、“自分が大事にされている”感を味わえること

「ミングル」は、リビングに置かれた“ごはん装置”。上下水道、IHコンロ、食器洗浄機が組み込まれ、簡単な料理、食事、片づけの機能がオールインワンになっています。

簡単な料理、食事、片づけの機能がオールインワンになっています凝った料理はつくれませんが、有賀さんが提案している、短時間で、鍋ひとつでつくれる料理にぴったり。

有賀さんのスープ作家としての原点は、息子さんの朝食づくりにあります。かつて大学受験を控えていた息子さんに「朝、食欲が湧く一品を」と考えてつくった料理がスープでした。そのスープ・レシピをSNSで発信し続けて支持を得て、現在に至ります。

「もともと料理は好き、食べるのも好きでしたが、スープをつくり始めてからは、料理に対する思いが、どんどんクリアになっていきました。強く感じたのが、現代人の生活で料理を“完璧にこなす”のは、相当大変な仕事である、ということです。とくに子育て中の人からすれば、毎日の献立や家族の栄養バランスを考えるのは永遠に尽きない悩みですし、買った食材をムダなく使いきることだって、簡単そうに見えてじつは大変なんですよね」

ただしその一方で「やはり家庭料理は大事なもの」という思いも。

「お弁当や外食もひとつの選択だと思っていますが、お総菜の濃いめの味に飽きてしまう、毎日食べ続けるのはちょっと…という方もいると思うんです。私もその一人。素朴で何年も飽きずに食べられる、その家だけでつくられているような味つけが好きなんです。そんななかで、簡単につくれて、アレンジもつくりおきもできるスープは、現代人のライフスタイルに適した料理なのではないかと思うようになりました」

材をさっと煮込んで完成するものばかり有賀さんのレシピは、従来のスープにあった「手間がかかる」というイメージを覆す、素材をさっと煮込んで完成するものばかりなのが特徴です。

「冷蔵庫にあるものですぐに一品が完成して、みんなで一緒に食べられる。私が考えているのはそんなスープ・レシピです。外から帰ってきて温かいスープがあったら、だれでも気持ちがホッとしますよね。家庭料理のよさとは、そんな“自分が大事にされている”感を味わえることではないでしょうか」

料理に苦手意識がある人には、一度「自分はなにが苦手なのか」を見つめ直してみるといいそう。
「献立を考える→買い物をする→食材を洗う→切る…といったように、料理の最初から最後までの流れを、一度紙に書き出してみてください。そのなかで、自分が大変だったり、苦手だったりする部分はどこなのか、考えてみましょう。私の場合は後片づけと洗い物でしたが、ミングルをつくり、テーブルに食洗器を合体させたことで、このストレスが軽減しました! 悩みはさまざまですし、解決法も幾通りもあると思います。子育て世代の女性は、家族のために、と、いろいろなことを我慢してがんばってしまいがちですけど、料理ひとつにしても、自分はどうしたいかと考える時間をもってみてはどうでしょうか」

意見交換するのもおすすめ家族や、親しい友人と、食事になにを求めているのか、意見交換するのもおすすめ、と有賀さん。

「栄養最優先という人もいますし、楽しい雰囲気が必要という人もいたりと、人が料理に求めるものは、本当にさまざま。周りの意見を通じて、自分が料理に必要なもの、必要でないものがわかってくるかもしれません。そうやって少しリサーチもかけながら、自分なりに豊かさを感じられる暮らし方をつくり上げてほしいと思いますね」

有賀さんのこれからの家庭料理への考え方「こだわりすぎない」というのも、有賀さんのこれからの家庭料理への考え方。

「性別や年齢、その日の体調によっても、おいしさの感覚は人それぞれ違ってきます。味つけだって基本的なことだけをやり、テーブルに塩、コショウ、おしょうゆと、調味料をドーンと置いて『ものたりない人、あとはご自由にどうぞ!』でいいと思うんです。私なんかは昭和に育った世代ですから、子どもの頃は、ドレッシングがこんなに普及していませんでした。サラダの味つけといえば、家にある塩、油、お酢を組み合わせて、自分たちの好みのものをつくっていたんです。シンプルだし、自由でしょう? こういう料理への自由な感覚が、また広まるといいと思いますね」

有賀薫さんのインタビュー第1回「あえてキッチンの機能を減らしたら料理が格段にラクになった」、第2回「ナスが主役!有賀薫さんの手間を省いたごちそうみそ汁」も公開中です。こちらもぜひご覧ください。

<撮影/山川修一 取材・文/石井絵里>

【有賀薫さん】 
スープ作家。東京都出身。玩具メーカー勤務、フリーライターののち、2012年から朝のスープをつくり始める。2018年に出版した『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう 1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ』(文響社刊)が、第5回レシピ本大賞入賞

帰り遅いけどこんなスープなら作れそう 1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ


毎日忙しく頑張る人の暮らしを応援するスープレシピです。