25年前凍結した受精卵から女児が誕生。最新・医師に聞く不妊治療の基礎知識
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2018.02.01
少し前に、アメリカのテネシー州で「25年前に凍結保存された受精卵で健康な女児が誕生した」というニュースが話題になりました。このケースでは、「受精卵を採取した女性」と、「受精卵を移植した女性」は別の人物です。25年前に「凍結胚」として25年間保管された受精卵(胚)が、時を経て別の女性の子宮に移植され、誕生に至ったのです。

出産した母親は26歳。生まれた赤ちゃんが受精卵になった時期を「年齢」ととらえると、「母親と子どもが1歳しか違わない」ことになり、このニュースは驚きとともに世界を駆け巡りました。

凍結保存期間としては世界最長記録になる上記の例はとくに珍しい事例ですが、医療技術の向上により、同時に生まれてもおかしくなかった二人の赤ちゃんが、数年のタイムラグを経て誕生するということは、もはや珍しくないケースとなっています。

不妊治療

25年間凍結された受精卵から赤ちゃんが生まれるケースも!不妊治療の最新事情

そこで、ここでは、「意外に知らない不妊治療の基礎知識」について、井上メディカルクリニックの井上憲先生にお話を伺いました。現在不妊治療中の方はもちろん、すべての夫婦にとって参考になる知識です。

――不妊治療とひと口にいっても様々な種類があると聞きます。具体的には、どのようなものがあるのでしょうか?

不妊治療はおおまかにいうと、「一般不妊治療」と「高度生殖医療」にわけられます。
一般不妊治療には、排卵日を医師が予測して性交渉をもつ日時を口頭で指導する「タイミング法」、黄体ホルモンの補充を経口剤や注射剤で行う「排卵誘発法」、採取し洗浄・濃縮した精子を細い管を使って子宮の中に注入する「人工授精」があります。

こうした一般不妊治療で妊娠しないときに、高度生殖医療にステップアップする流れになります。

――高度生殖医療にはどのようなものがありますか?

高度生殖医療には「体外受精」と「顕微授精」があります。

卵子と精子をピックアップして体外で受精させ、受精し分裂した受精卵(胚)を子宮内に戻す方法を「体外受精」といいます。採取した卵子と精子をシャーレの中で培養し、多くの精子のなかから、1つが自分の力で卵子に入り込む方法です。

それに対し、1つの精子を選んで卵子の中に注入し、受精させて子宮に移植する方法が「顕微授精」です。

「凍結胚」を子宮に移植するのは、不妊治療でよく使われる技術です

――では、「凍結胚」とはなんでしょうか?

「凍結胚」は「体外受精」や「顕微授精」でできた受精卵(胚)を凍結したものの呼称です。

受精卵を子宮に移植する際の方法のひとつとして「凍結胚移植」があります。受精卵(胚)を、いったん凍結してから子宮に移植する方法です。

凍結した受精卵(胚)を「凍結胚」と呼ぶことに対して、凍結していない胚は「新鮮胚」と呼ばれています。

――なぜ受精卵を凍結するのですか?

排卵誘発剤の影響を受けて、子宮内膜が薄くなっていたり卵巣に腫れが認められたりする場合、子宮が移植に適さないこともありえます。

凍結することによってよいタイミングで子宮に受精卵(胚)を戻すことが可能になるので、一般的に凍結胚移植は着床率は高く、流産率は低いと言われています。

――過去の不妊治療で余った胚を凍結し、出産後に「次の妊娠」のために戻すこともあるということですか?

凍結にはすべての受精卵を凍結する「全胚凍結」と、採取し胚になったなかから余ったものを凍結する「余剰胚凍結」があります。

子宮に移植した新鮮胚以外にもよい状態の胚があり、廃棄するにはもったいないと判断されたとき、余剰胚を凍結することを余剰胚凍結といいます。

――その余剰胚を再度子宮に移植することも可能ということですね。ありがとうございました。

●教えてくれた人
【井上憲先生】

産婦人科医師。『医療法人社団暁明会井上メディカルクリニック』理事長/院長。慶應義塾大学医学部卒後研修修了、日本産科婦人科学会認定専門医、保護保護法指定医、東京産科婦人科学会学術編集委員、杏林大学医学部非常勤講師。

<取材・文/星野小春>