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大坂なおみ選手「うつ病」報道への違和感。うつ状態とうつ病は違うもの

川本義巳
2021.06.29

プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手が全仏オープンを棄権し、ツイッターで自身がうつ病であると公表した、というニュースが大きな話題を呼びました。しかしうつ専門メンタルコーチ、公認心理師の川本義巳さんは、報道に違和感を覚えたといいます。
「うつ状態」と「うつ病」の違いについて、語ってもらいました。

テニスボール
写真はイメージです

大坂なおみ選手の「うつ病」報道についての違和感

初めて大阪選手のこのニュースを聞いたとき、もちろん驚きもしましたが、それ以上にとても不思議な感覚が私のなかで生まれました。

ニュースを見ると、大阪選手は自分自身のツイッターで「うつ病であること」「2018年ごろから長期にわたり苦しんでいたこと」を語ったとのことで、「うつ病である」という表現をしているところがほとんどでした。
これに対して私の違和感は「いくらトップアスリートといえ、うつ病を発症していながら3年近くも競技を続けられるだろうか?」というポイントでした。

うつ病というのは、気持ちの落ち込みだけでなく、身体的な問題も数多く抱えます。私自身もうつ病になったときは、指1本動かすこともできないくらい、体に力が入らなくなりました。また、うつ病になると意欲や興味といったものもゼロに近くなります。それまで打ち込んでいたものができなくなるというのも、よく聞く話です。

●「Depression」という言葉は「うつ状態」も示す

ただ、うつ病と言っても千差万別です。もしかしたら、私が想像できないような病状もあるかも知れません。でも、それにしても違いがあると思い、彼女のニュースを調べられるだけ調べてみました。そして彼女のツイッターの本文も読みました。

そこで事実としてわかったことは、彼女は確かに「Depression」と書いていました。この単語はうつ病も示しますが、同時に「うつ状態」も示します。これ以外に彼女のツイッターから「医師の診断の結果」「病院で治療を受けている」と言った文言は見られませんでした。ほかの海外ニュースもチェックしましたが、「病院」「ドクター」「治療」「投薬」といったような言葉を見つけることはできませんでした。

このことから彼女は「長いうつ状態である」と言ったのかも知れないと考えました。それなら、しんどいながらも競技を続けることは可能だと思ったからです。
もちろん、私の調べられる範囲のことなので、他で「病院で診断をされ治療を受けている」という情報があるのかも知れません。でも、彼女の声明があった直後から「うつ病」が当たり前のように情報として流れてましたので、彼女の文面だけを見てそう判断した人が多かったのでしょう。

●うつ状態とうつ病は同じではない

うつ状態とうつ病は近い存在ではありますが、同じではありません
でも「うつ状態=うつ病」と考えている人もいるということが今回の件からも明らかになりました。案の定「うつ病」という単語だけに反応して、バッシングが起こったりしています。

確かに最初に私が感じたように「うつ病なのにこんなに動けるしSNSはできるんだ」と思った人も多かったと思います。それがまた新たな誤解を生んで「仮病説」なんかも出てきたりしています。でも、これが私の仮説どおり「うつ状態」ならまだ可能だと考えられます。実際、彼女だけでなく、世の中には毎日ゆううつな状態が続いているけど、がんばって仕事に行っている人、育児や家事をしている人、学校に行っている人がたくさんいます。

今回の件で、私がいちばん危惧しているのは、「うつ病ってこういうもんなんだ」と間違った知識を得てしまう人が現れるかもしれないということです。そういった人が、実際にうつ病で苦しんでいる人に対して「ほんとはいろいろできるんでしょ」という風に思ってしまうのではないか、それにより傷つく人、回復が遅れる人が増えるんじゃないか…それが怖いと感じています。

また、もしかしたらうつ状態のまま病院にもかからずがんばっている人が「うつ病でもない私が『できない』と思うのは甘えじゃないか」と自分を責めてしまう可能性だってあります。
ニュースは便利で有益ですが、伝え方によってはこういった弊害も起こ得ます。そしてこれは、なにもうつ病に関してだけでなく、世の中で起こっていることすべてに当てはまります。ましてや今のネット社会、スマホやパソコンに表示されるニュースのタイトル1行ですべてを理解した感覚になりかねない状況です。

●あいまいな情報に振り回されないように

物事の本質を正しく見るためには「具体的にどうなっているのか?」というレベルまで確認する必要があります。
今回も私が言ったように「うつという表現は使っているけど、実際に病院に行っているとかは書いてないよね。だったらうつ病じゃないかも知れないな」と考えることで、間違った情報を記憶したり、周囲に拡散したりする危険を防げます。
いずれにせようつ病かどうかは医師にしか判断できません。うつ病を正しく理解するうえでも「それはお医者さんが言っているのかどうか」というポイントが大事ですね。

最後に大坂なおみ選手が早く元気になって、またあの感動するプレーを見せてくれることを心から祈ります。

●教えてくれた人
【川本義巳さん】

うつ専門メンタルコーチ、公認心理師。高校卒業後、SEとして20年以上メーカーに勤務。大手IT企業への転職を機にうつ病を発症、寝たきり状態になり、1年2か月の休職を余儀なくされる。職場復帰後も6年間うつ病に悩まされ、さまざまな方法を試すが失敗。2007年コーチングに出合い、うつ病を完全克服。その体験をきっかけに現職に。著書に『1日3分でうつをやめる。』(扶桑社刊)がある

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