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がん治療中に働く薬剤師。「私のように“気づいたらステージ4”という人が減ってほしい」

坂元希美
2021.04.30

●ときめきが消えて、未来を考えられなくなった

仕事にがん患者としての経験を生かし、治療に薬剤師としての知識をフル活用して、明るく生活する田中さんですが、がんを告知されてから変わったこともあります。

着物を着た女性とポーズをとる男性
がんになる前の田中さん。10年前に兄の結婚式で

「ずっとペットに鳥を飼いたいなと思っていました。でも、薬を変更する度に1週間ほど入院して留守が多いから、ペットに寂しい思いをさせてしまうだろうし、パートナーも子どももいない私は、後に託す相手がいない。ペットを残していけないから飼えないですよね。たまにペットショップとか里親募集のお知らせを見て、一緒に暮らしたいなあと思うものの、ぐっと我慢しています。もちろん、普通の人でも大災害や不慮の事故で急に死んでしまう可能性はありますけれど、より死ぬことを身近に意識して、怖くなったものが増えました」

「たとえば、恋愛感情が一切なくなりました。以前だったら、知り合った人と『もしかしたら、この人と…?』と想像したり、アプローチしたこともありましたが、今は冗談でも言えなくなりましたし、ぜんぜん思わない。昔から好きな芸能人をテレビで見ても、ときめかない。かっこいいなーとは思うんだけど、ドキドキしちゃう感じがなくて。そういえば、乳がんになってからだれも好きになってないなと気づきました」

「もう40近いし、女として枯れちゃったのかなあとも思ったんですが、ほかにも年下の友人のことを『この子は将来、どうなるのかな』とかも思わなくているんです。5年、10年後の世界がイメージができないんです」

「自分でその感覚を掘り下げると、死が身近になって、5年後、10年後にその人が泣いているかもしれないと考えると、一歩引いてしまうんだと気がつきました。無意識にでしょうが、それでだれもなにも好きにならなくなったように思います。寂しいなと思う一方で、身体の方が状況を理解して、そのように動いてくれているんだとも思います。もし、今の状態でだれかを好きになったら、とても辛いことになるでしょう? そうならないようにストッパーをつけてくれたんだなって。そうは言っても、いま小学生の姪っ子が成人するまでは生きていたい、がんばろう! と思ってはいます。だけど、副作用が辛いときには『やっぱりだめかも』と思ってしまうんですよね」

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