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38歳の彼女が抗がん剤を使いながらお店に立つ理由。がん罹患者の1/3は就労世代

坂元希美
2021.04.29

●薬剤師ならではのがん治療の向き合い方

田中さんは薬剤師というお薬の専門家なので、積極的に治療に参加して、自分の体験を役立てたいと思っているそうです。

両手
抗がん剤の副作用は爪にもあらわれる。ネイルオイルなどを使ってケアしているのだそう

「主治医とのやり取りは、普通の人よりかなりスムーズだと思いますね。薬剤師なので検査結果の数値も理解できますし、使う薬の作用もわかっています。次はどういう治療になるかを予測して心構えができるので、普通の人よりショックは少ないかも。先生もわかりやすく言い換えたりしなくていいから話しやすいんじゃないでしょうか。副作用が強く出たときなど、自分から主治医に別の薬を提案をすることもありますよ。なので、自主的に治療に参加している実感があります」

「がんの薬物療法ではいろいろな副作用がありますが、しびれやだるさなど限界までがまんする患者さんが多いと聞きます。私は『これは副作用で出ている症状』という知識があるので不安も少ないし、『これはだめだな』というラインが判断できているので、がまんのしすぎをせずにすんでいると思います。治療3年目になって、ちょっと実験みたいに考えてるところもありますよ(笑)」

「もちろん、治療でつらいこともあるけれど、貴重な体験だから情報をシェアしたいと思っています。年間で約100万人が新たにがんに罹患しますが、その3分の1が私のように働く世代です(※)。若い世代は、がん治療を受けたらどんな状態になるのか、なにが体に起こるのかを見る機会はなかなかないでしょう。だからこそ、この体験を伝えたいと思います。まずは上司に話したりして、薬剤師たちにシェアできたらと思っています」

※がん患者は増加しており、うち3人に1人は就労可能年齢で罹患(20-64歳:全体の32.4%、20-69歳:全体の45.6%)(厚生労働省「がん患者の就労や就労支援に関する現状」より)

がん患者であることが、薬剤師という仕事にプラスになっている部分もあるそうです。

「自分ががんになってから、薬剤師として患者さんへの接し方が変わりました。以前は『なんでこの人はちゃんと薬を飲まないんだろう?』とか、たぶん上から目線でとらえていたと思うんですね。それが、患者さんはこの症状だと怖いんだろうなとか、不安だから薬をちゃんと飲めないんだというように、感情面が理解できるようになったと思います」

「たぶん、がん以前は『いい/悪い』でスパッと考えていたんですね。『薬をちゃんと飲まないのは、悪い』とか。でも、今は『悪い』じゃなくて不安なんだと思えるようになった。医学って黒か白しかないと考えがちなのですが、患者にはその間に大きなグレーゾーンがあるんですね。私は白黒をつける、あるいは唯一の答えを目指す世界で育ってきましたけれど、今は答えは一つではないし、その間があるんだと実感しています」

<取材・文/坂元希美>

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