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38歳の彼女が抗がん剤を使いながらお店に立つ理由。がん罹患者の1/3は就労世代

坂元希美
2021.04.29

●コロナ禍で仕事とがん治療を両立させること

髪が抜けたり、発熱や倦怠感などの副作用が強く出る点滴の抗がん剤を始めたのは、ちょうど新型コロナウイルス感染が拡大した頃。その中で仕事を続ける不安はなかったのでしょうか。

パソコンの前に女性
仕事中は医療用ケア帽子を着用している田中さん

「私の母はB型肝炎に罹患したことがあり、インターフェロンで治療していました。今思えば相当しんどかっただろうなと思うのですが、パートの仕事を辞めずに働いていたんですね。大学生だった私は『そういうものなのか』と思っていました。多少つらくても、働くのが当たり前なんだと。だから、私も今、多少つらくても仕事に行きます。副作用が出ていても、動けるなと思ったら職場に行っちゃう。仕事を生きがいにしているというほど、好きなわけではないんですけどね(笑)」

「点滴の抗がん剤治療が始まったときに新型コロナの感染が拡大しました。あの頃はまだコロナでどんな症状が出るのかや治療法もわからず、がん患者にどう影響するのかも、医療体制がどうなるのか不透明でした。白血球の数が減少するので感染症にかかりやすい状態でしたし、緊急事態宣言が出たこともあって、主治医から休職した方がいいと言われて、3か月間休職しました」

「私は1か月ほどで復帰するつもりでしたが、その頃に俳優の岡江久美子さんが亡くなって、家族に大反対されました。私ががん治療中だと知っている友人や親戚も、みんな『気をつけて、大変だよ』と言ってきて。著名な同じ病気の人が亡くなったのは、周りの人にとって大ショックだったんです」

休職して体を休めたり、感染の不安がなくなるかと思いきや、かえって不安やつらさが増したという田中さん。外出自粛の状況は、がん治療中の患者に大きな影響があります。

「休職中は、散歩すら止められました。そうやって家に閉じこもっていると、やることも限られるし、両親としか顔を合わせないので、窮屈でつらかったですね。ずっと心配してくれている友達に会えなくて、『意外と元気なんだよ~』という姿を見せられないのもつらかったです。会えない間に髪がなくなったり、外見が大きく変化してしまったので、久しぶりに会うと急激に変わった=悪くなったと思われてしまうんです。たまたま外ですれ違った仲よしが、私だと気づかなかったくらい、外見が変わりましたからね。私自身は元気だし、自分や家族は症状も外見が少しずつ変わっていくのを見て、少しずつ消化していけるのですけれど。頻繁に会っていれば、変化していくのをプロセスでわかってもらえたのに…と思いました」

3か月の休職後、2020年の夏に職場復帰した田中さん。仕事を続けるのは、患者である自分自身の助けにもなると思っているそうです。

「休職中は家にこもっていたわけですが、その間はずっと病気のことを考えて悶々としちゃって、症状もすごく意識してしまって、つらさが大きくなってしまっていたと思います。仕事に行けば体も動かしますし、自分が病気だということを意識する時間が減るんですよね。薬剤師って、がん患者にはもってこいだなと思ったりもします(笑)。座りっぱなしでもないし、立ちっぱなしでもないから、浮腫や倦怠感があってもなんとかなります。お客さんに接するときにはそちらに集中しますから、いろんな方向に意識が向くんですよね」

「がんと診断されてから、じつはやりたいことが減ったんです。私は大のディズニーファンで、以前は毎日でもディズニーランドに行きたいと思ったのに、そうは思わなくなった。買い物も大好きでいろんなところに買いに行きたかった。それが、できるはずなのに、したいと思わなくなってしまった。趣味が減ってしまうと時間があっても、やることが少ないんですよ」

「仕事に行ったほうがやることがたくさんあって、病気のことを考えない時間が多いんです。時間の感じ方も違って、なにもしない1時間と、やることに追われている1時間だったら、後者の方が短く感じます。そうしたら痛みや気持ち悪さを感じている時間も短いと思うんです。たぶん、告知された時に仕事を辞めていたら、これほど元気ではいられなかっただろうと思いますよ」

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