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コロナウイルスは湿気に弱い。梅雨の前にしておきたい対策

ESSEonline編集部
2020.05.22
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冬に流行が始まった新型コロナウイルス。これから季節が夏に変わることで、どのような変化があるのかが注目されています。

長年に渡って一般住宅、大学病院、老人介護施設など異なる環境に存在する「真菌・細菌・ダニ・微小昆虫」などを総合的に調査・研究してきた博士(農学)の川上裕司さんは「日本の梅雨は拡散を阻止する一因となるでしょう」と話します。
ウイルスと湿気の関係について、詳しく寄稿していただきました。

傘をさす女性
新型コロナウイルス対策には、気温と湿度を意識することも大切

新型コロナウイルスは、湿気に弱い。日本の梅雨は拡散を阻止する一因となる

4月24日に米国の国立生物兵器分析対策センター(NBACC)が「太陽光によって新型コロナウイルスが急速に不活性化する」という研究報告を出したことがWebニュースやテレビ番組でも流されました。
環境微生物学を専門とする筆者からすると、「なにを今さら! ウイルスが紫外線に弱いことなど当たり前のこと!」と考えた次第です。ただし、「新型コロナウイルス」を供試して太陽光の紫外線や湿気に弱いことを明確にしたことは、大きな意味があると思います。

NBACCは、「気温21~24℃、湿度20%の実験条件で、
(1) 無孔質の表面(ツルツルの基質)では、ウイルス量の半減期は18時間だったが、湿度を80%に上げると、半減期は6時間に減少し、さらに太陽光が加わると、2分間にまで減少した。
(2) 空気中にエアロゾルの状態で浮遊したウイルスの半減期は、1時間だったが、太陽光が加わると、1分半にまで減少した。」
と報告しています。

このデータは、日本の夏季(6月~9月)の気候は、確実に新型コロナウイルスの拡散を阻止することを意味しています。
私は今、「とくに関東地方でなるべく早く梅雨が始まって、カラ梅雨にならないでほしい!」と天に祈っています。

●インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスは同じエンベロープウイルス(RNA)

新型コロナウイルスを不活化する湿度について論じるうえで、インフルエンザウイルス対策のための湿度コントロールを応用することができます。
インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスは同じRNAウイルスの仲間で、形態もよく似ています。
また、冒頭で述べたように、新型コロナウイルスが紫外線や湿気に弱いという明確なデータが出たことから、新型コロナウイルスが、インフルエンザウイルスよりも物理的な刺激に強いとは到底思えません。

●相対湿度と絶対湿度とは

空気には窒素や酸素などが含まれており、「乾き空気」に水蒸気(H2O)が含まれた空気を「湿り空気」と定義しています。
湿度は、空気中に含まれる水蒸気の量を表す尺度のことで、一般的に「湿度」という場合には、ある気温(温度)における「相対湿度」のことを指します。

もう一つ、湿度を表す尺度に「絶対湿度」があります。湿り空気に含まれている水蒸気の質量を指し、乾き空気1Kgに対する量として単位「Kg/Kg」で表します。絶対湿度は、温度が上がったり下がったりしても変わりません。

インフルエンザ対策で指標となるのは、空気中の水分量を指す「絶対湿度」です。絶対湿度が低いほどインフルエンザウイルスの活性が高くなることは、さまざまな研究データから明らかにされており、気温が低下する冬季に感染リスクが高くなることは一般の方々もよくご存知のとおりです。

空気の乾燥とインフルエンザの流行の関係
図18

図18は、空気の乾燥(絶対湿度)とインフルエンザ流行の関係を示したものです。
警戒レベルは、絶対湿度が7g/m3以下で、手指や唇が乾燥してひび割れるなど体感的にも空気が乾燥してカラカラであることが実感できるレベルです。要注意レベルは絶対湿度7.1~11.0g/m3以下で、安全レベルは絶対湿度11.1g/m3以上ですが、11.0g/m3付近は体感的に微妙なので注意が必要です。

気温と相対湿度からみた絶対湿度とインフルエンザ流行の関係
図19

図19で、各レベルを色分けして示しました。

東京都の月ごとの平均気温と相対湿度の推移
図20

図20に、東京都の月ごとの平均気温と相対湿度のグラフを示します(2007年~2016年の10年間のデータから算出)。夏季の6月~9月を赤枠で囲いました。

6月の平均気温22.6℃・相対湿度72%について、「図19の22℃・70%」に当てはめてみますと、絶対湿度は13.6g/m3となり、安全レベルになります。絶対湿度が高い環境、すなわち、空気中の水分が多いとインフルエンザウイルスは長時間生存することができません。

インフルエンザウイルスであれ、新型コロナウイルスであれ、絶対湿度が高いとウイルスはヒトの咳やくしゃみによって拡散することができず(遠くまで飛ぶことができない)、床や地面に落下して感染力を失います。
また、絶対湿度が高いことは、感染経路であるヒトの喉や鼻が乾燥せずに湿った状態が保たれることによって、ウイルスの侵入をブロックすることにも繋がります。

「アフリカのような暑い国でも新型コロナウイルスが流行していることを見れば、夏季に日本の感染者数が減ると考えるのは間違いだ」という情報が流されています。その情報は、単に気温と感染者数だけに着目するもので、今回述べた「湿度」にはあまり言及していないように思います。日本の高温多湿のジメジメした暑さと熱帯地域のカラッとした暑さとは異なる気候条件です。

●自分の周りの気温と湿度を意識しよう

新型コロナウイルス対策のためには、生活のなかで自分の周りの気温と湿度を意識することをおすすめします。そのためには、室内に温湿度計を設置しておくといいでしょう。
梅雨に入るまでの期間は、「季節の変わり目に伴う衣類や寝具の的確な調節」も、新型コロナウイルス感染症対策に必要です。

ヒト(ディフェンス)と新型コロナウイルス(オフェンス)との闘いにおいて、夏季の気象条件は、ヒト側に有利に働くことは間違いありませんが、夏季で終息するとは思えません。秋季からの後半戦に勝利するためには、前半戦の終盤に差しかかった今、いかに感染者数を減らすことができるかがキーポイントになると思います。

対策の基本「3密をつくらず、マスク・うがい・手洗い」を真摯に履行していきましょう。

※本記事は、「新型コロナウイルス感染症対策~IPM研究室~環境微生物学の研究者~の立場から~」の内容を一部抜粋・要約したものです。

●教えてくれた人
【川上裕司さん】

博士(農学)。(株)エフシージー総合研究所暮らしの科学部(フジテレビ商品研究所)取締役・部長。環境微生物を専門とする。エフシージー総合研究所公式サイト内で「新型コロナウイルス感染症対策~IPM研究室~環境微生物学の研究者~の立場から~」のコラムを掲載中