二世帯住宅にはメリットが多いと言われています。しかし生活時間帯の違いから生活音が気になったり、親世帯の要望を把握しきれなかったことが原因の不満など、注意しないといけないことが多いのも事実です。9年前に両親が祖母と暮らす実家を二世帯住宅に建て替えたという、北欧式整理収納プランナーの安藤佳世子さんが、建てることを決めたきっかけや事前に話し合ったこと、そして実際に暮らしてみてどうだったかを語ります。

玄関は共用にした二世帯住宅
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目次:

結婚をきっかけにこれからのライフスタイルを考え、二世帯住宅を決意二世帯住宅への移行は親が若いうちがスムーズ二世帯を実際に建てる前に確認しておく必要があること3つ一番大事なのは、お互いに住みやすい環境を実現すること

結婚をきっかけにこれからのライフスタイルを考え、二世帯住宅を決意

結婚をきっかけに二世帯住宅を考え始める

まずは、今回二世帯住宅を建てるに至った、筆者の背景を説明していきます。

結婚後スタートしたアパート生活に疑問

結婚当時はアパートに住み家賃を払い続けていた状態だったので、そこで疑問が生まれ「このまま家賃を払い続けるもったいなさ」を感じ始めていました。夫婦では家を持つことの夢も同時に持っていました。

今後の生活を考えると一緒に住むほうが安心

私自身には兄弟がおらず、私が両親の世話をすることはもともと覚悟はしていました。近くに住んでいわゆる「スープの冷めない距離」がよいのかなとも思いましたが、実際に緊急な事がある場合にはやはり一緒の家に住んでいた方がさらに安心なのではと。また両親の世話だけでなく、私達夫婦にも何かあった際には助けてもらえるのではと、そちらの安心感もあったと思います。

現実的な予算の問題からも土地があることは理想的

家を建てる際には土地も必要となってきます。なるべく広い家に住みたいという夫の希望もあったため、私の実家を建て直すことにしました。土地から購入し建物を建てることは予算もそれなりに必要ですし、家自体にかける予算も削らなければいけません。そのような願望が幸せなことにかなったことで、今の二世帯が建てられたのだと思います。

二世帯住宅への移行は親が若いうちがスムーズ

家を建てたのが2012年4月、念願のマイホームが完成しました。家族構成は夫(35歳)、筆者(33歳)、父(66歳)、母(61歳)、祖母(83歳)の5名。両親はまだ60歳代でしたので体力もあり、引っ越しや家の片付けは問題なく進みました。

今から考えると二世帯住宅を建てる時期は、両親の年齢も考慮すべきだったと思います。

家自体は玄関のみ共有の上下で分かれた二世帯住宅。土地の名義は親のままにして、家は「共有名義」にしました。

二世帯を実際に建てる前に確認しておく必要があること3つ

二世帯住宅の図面

ライフスタイルの違いから、ベストな住み方を考える

親世帯と子世帯ではライフスタイルに違いがあります。親世帯の生活は朝早く起き夜は早めに就寝すること、反対に子世帯の生活は夜型に近い生活のお宅が多いのではないでしょうか。

そうなると夕飯やお風呂の時間もずれて、生活の時間がキーポイントなってきます。そういった異なるライフスタイルを念頭に置き、二世帯の「完全同居」、「部分共用」、又は「完全分離」のどの住み方を選択すべきか決定しなければいけません。

どこに依頼するか、資料を集め両親と話し合う

最初はどのような家に住みたいのか全くイメージがわきませんでした。近所にも工務店など全く見かけることがなかったので、よくある住宅展示場に足を運び、どのような家があるのかイメージを膨らませることに決めました。

まずは夫と私だけで展示場を回り、様々な家の構造や設備を見て大量の資料をもらい、それを両親に見せながら話し合いを始めました。両親にも実際に展示場に行ってもらい夢のような家を見てもらったのです。

実際に決めたハウスメーカーは「積水ハウス」。正直、営業の方がとてもよい方でした。親身になって相談にのってくれたことが、ハウスメーカーに決めた理由の1つです。

家を建てたあとも長いお付き合いになるので、相性のよい方が営業でよかったと今では思っています。あとは建物の構造(軽量鉄骨)、二世帯住宅の実績、住宅設備の充実などを魅力に感じて決定しました。

生活音も課題として話し合うべき項目

二世帯住宅は玄関のみを共有

わが家は「部分共用」の二世帯にして、玄関のみを共有してその他は全て別に設けました。しかし最初は玄関のみ共有にすることも悩みました。仕事で帰りが遅くなった際に、ドアの開閉音や廊下を歩く音が気にならないかなど、気を使う部分があるだろうと。

建てて分かったのですが、親世帯からするとそういった音が無事に帰ってきたのだという安心感へと繋がるようです。中には少しの音でも気になる方はいると思いますので、このような生活音も課題として話し合うべき項目です。

一番大事なのは、お互いに住みやすい環境を実現すること

子世帯のキッチン

玄関以外の設備をすべて別にしたのにはやはりライフスタイルの違いがあるからでした。キッチンやお風呂、トイレなどの水回りはお互いのスタイルに合わせて設けたかったという理由もあります。

当初は1階の親世帯のキッチンは簡易なものにする予定でした。しかし子世帯も含め皆で食事をする際にはきっと1階に集まるだろうということで、しっかりとしたシステムキッチンを設置することに決めました(祖母がいるので2階まで来ての食事は辛いだろうという意見もありました)。

親世帯のリビング

共有部分が多ければコスト削減につながることはありますが、お互いに住みやすい環境をどのようにすれば実現できるのかをまずは決めることです。

わが家は最初の段階で半分同居状態として住もうという提案も出ましたが、夫と私はやはり自分達の生活スタイルが崩れるのが嫌だと思ったので、今までのスタイルを継続できるよう親世帯には話をしました。

お互い干渉しすぎることなく、助け合う時は助け合える環境にしておくことを前提に家を建てることを決めたのです。

なぜ二世帯という選択をしたのか、またそれを決定するまでの検討事項をご紹介してきました。人数が多い分決めることは多かったですし、玄関以外のスペースは全て別だったのでお互いの設備を決める時間もかなりかかりました。

しかし9年間、大きな問題も起こらず快適に暮らしています。家全体のことを考えるうえでは、とにかく話し合いの時間はおろそかにしないこと。時間をかけてお互いに満足のいく住まいづくりを目指すことが大事たと思います。

●教えてくれた人/安藤佳世子さん
北欧式整理収納プランナー、アロマテラピー1級。実家を二世帯住宅に建て直し「よりよい暮らし」をつくるため家やインテリア、生活について発信中