家を建てるときに、多くの人が利用する住宅ローン。完成後も長い付き合いになるだけに、家計の負担にならずに返済し続けられるのが理想です。そのためには、住宅ローンの基本を知ることからスタート。まずは金利と返済方法の種類について解説します。

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目次:

金利の種類は3つ。組み合わせるのも賢い方法家計ごとに向く金利のタイプは?返済方法は2パターン。元金の減り方に注目ローンが始まったら繰り上げ返済の計画を!

金利の種類は3つ。組み合わせるのも賢い方法

住宅ローンには、まず「固定金利」「変動金利」「固定金利選択型」があることを知りましょう。

固定金利は金利水準がやや高いですが、ずっと返済額が変わらない安心感があります。たとえば、「フラット35」と呼ばれる住宅ローンは長期固定金利の代名詞で、住宅の条件を満たせば、収入面など人に対しての条件が緩やかなので、広く頼れる存在です。

変動金利は固定金利より低金利で、民間で利用できます。5年ごとに金利が見直され、返済額が増えたとしても1.25倍以内。ただ金利上昇時には「未払い利息」が発生し、負担を背負う可能性もあります。

固定金利選択型は民間の金利優遇商品でよく見るローン。数年間、低金利で借りられるもので、期間中貯蓄に励み、貯めたお金を繰り上げ返済にあてると、効率のいい返済が実現可能に。ローンは2つ組み合わせ、例えば教育費のピーク時までに1つ完済、など計画すると、返済が苦しくなりません。

家計ごとに向く金利のタイプは?

住宅ローンを利用するときは、金利と返済方法を選びます。

共働きの家庭、学齢期の子どもがいて教育費がかかる家、夫婦2人暮らしなど、家族構成やライフスタイルによっても家計の事情はいろいろ。要は、それぞれの家計に合った住宅ローンを選ぶことです。

固定金利型

固定金利型

その名のとおり、全期間金利が変わらないタイプ。返済計画が立てやすいのが利点ですが、その代わり変動金利よりも金利がやや高めに設定されています。

<こんな家計に向く!>

多少金利が高くても、ずっと返済額が一定であることに安心を得たい人。家計に余裕がなく、返済額が上がると家計が困る人。

変動金利型

変動金利型

年2回金利が変わり、6年目に返済額が見直されるのが変動金利型。その際も1.25倍以内ですが、金利上昇時に「未払い利息」分の負担が増す可能性もあります。

<こんな家計に向く!>

ローンの借入額が少ない人。万が一、未払い利息が生じても、負担は少なくてすみます。共働きで家計に余裕のある人におすすめ。

 固定金利選択型

固定金利選択型

固定金利選択型は、金融機関が決めた期間、金利を固定し、その期間が短いほど低金利になるのが特徴。期間終了後は、変動金利か同じ型を選ぶことになります。

<こんな家計に向く!>

子どもがまだ小さく、低金利で借りている短期間に貯蓄できる人。貯めた分、どんどん繰り上げ返済に回せばトクできます。

返済方法は2パターン。元金の減り方に注目

住宅ローンの返済方法には、2種類あります。どちらを選ぶか、じっくり考えましょう。

元利均等返済

元利均等返済

毎月の返済額を一定にし、元金と金利分を均等に払っていく方法。返済額が変わらないので計画が立てやすい半面、元金がなかなか減らないのがデメリット。

元金均等返済

元金均等返済

元金を毎回一定額払う方法。当初の返済額は多くなりますが、元金の減りが早く、総返済額が抑えられます。この方法は一般的ではないので、利用するなら申し出ましょう。

ローンが始まったら繰り上げ返済の計画を!

繰り上げ返済の2つの型「時間短縮型」「返済額軽減型」

返済が始まったら、空気のような存在になりがちなローン。でも借りっぱなしでなく、繰り上げ返済でなるべく早く返す計画を立てましょう。

繰り上げ返済には2つの型がある

上の図を参照してみましょう。繰り上げ返済には「①期間短縮型」と「②返済額軽減型」の2つがあり、総返済額の軽減効果が高いのは前者。繰り上げ返済したお金は元金分にあてられ、その元金から発生するはずだった金利分を一気に減らせるからです。また、将来の教育費の増大に備えて家計を調整したい場合などは後者を選びましょう。

繰り上げ返済を行うタイミングは、早ければ早いほど効果的(期間短縮型)。少ない額でも受け付ける金融機関も増えているので、こまめに返していくのがおすすめです。

繰り上げ返済は早めに行うほうがトク

例えば、借入金2000万円・返済期間35年・固定金利型・金利2.0%のローンを期間短縮型で100万円繰り上げ返済した場合。

繰り上げ返済の時期 1年後 5年後 10年後
金利分の軽減額 約99万円 約79万円 約66万円

10年後に比べて、約33万円もトクになります。

数十年単位で続く住宅ローンは、早く返済できたらうれしいですが、いちばん大事なのは、そのときどきの家計を切り詰めすぎないこと。住宅費以外にかかる資金もきちんと取りおきながら、無理せずスマートに返済していきましょう。

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
写真/PIXTA