【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)家づくりでいちばん頭を悩ませるのがお金の問題。少し無理していい家を手に入れたとしても、ローン返済に家計が圧迫されたら、せっかくの新生活を楽しむゆとりがなくなることも…。そう、資金計画に無理は禁物です。どのくらいローンが組めるか?いくらぐらいの家なら買えるか?まずは、「わが家の適正予算」をきちんと割り出すことから始めていきましょう。

住宅ローン
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目次:

頭金を2~3割用意できると理想毎月支払えるローンの額を割り出そうローンの借入可能額を算出しよう家にかけられる適正な総予算。その計算方法は?住宅購入の優遇制度は要チェック!

頭金を2~3割用意できると理想

家づくりでは、建築費にばかり目がいきがちですが、実はそのほかにも、税金や保険料、引っ越し代や家具・カーテン代などの諸経費がかかります。

また、そもそも建築費をまるごとローンで補うのは、返済のリスクが大きすぎます。最低でも2割、できたら3割は頭金を用意できると、資金計画に無理がありません。そのうえで、毎月支払えるローンの額、借入可能額、適正総予算を割り出します。

毎月支払えるローンの額を割り出そう

家計から、ローンの返済に回せるお金を計算していきます。

まず毎月、住宅にかけている費用を計算。例えば以下のように。

家賃 9万円
駐車場代 1万2000円
毎月の住宅用積み立て金 3万円
13万2000円

次に、住宅取得後に増えると思われる経費を洗い出します。

光熱費の増加分 約5000円(目安)
住宅補修用の積み立て 約1万円(目安)
固定資産税・都市計画税 約1万円
約2万5000円

毎月の住居費から取得後の経費を差し引いた額が、返済可能なローンの額になります。

返済可能なローンの額:13万2000円-約2万5000円=約10万7000円

これが上限額に。8掛け程度の額だと余裕があります。

ローンの借入可能額を算出しよう

住宅ローン返済の資金計画

Naoaki / PIXTA(ピクスタ)

次に、毎月の返済額と返済期間から、ローンの借入可能額を計算。下の表で、あてはまる欄を探します。

<毎月の返済額と返済期間から割り出すローンの借入可能額> (固定金利型・金利1.5%・毎月の支払いのみ)

毎月の返済額 25年 30年 35年
8万円 2000万円 2318万円 2612万円
9万円 2250万円 2607万円 2939万円
10万円 2500万円 2897万円 3266万円
11万円 2750万円 3187万円 3592万円
12万円 3000万円 3477万円 3919万円
13万円 3250万円 3766万円 4245万円
14万円 3500万円 4056万円 4572万円

例えば、先の項目で出した返済可能なローンの額から月々10万円払えると予想し、返済期間30年とした場合、2897万円が借入可能額となります。返済期間を長く取ればそれだけ多額が借りられますが、ローンは現役中の完済が鉄則と肝に銘じましょう。

なお、ここでは毎月の支払いのみとしましたが、ボーナスの投入も1回10万円など無理のない額ならOK。その分、借入可能額はアップします。

家にかけられる適正な総予算。その計算方法は?

上の表から数字をピックアップし、2897万円が借入可能額だったとします。ここに、頭金や諸費用分として用意できる自己資金を足した額が、家づくりにかけられる適正総予算となります。

自己資金(頭金+諸費用)+借入可能額=これがわが家の適正総予算

住宅購入の優遇制度は要チェック!

節税のイメージ

C-geo / PIXTA(ピクスタ)

ところで、住宅を取得する際には、国からの経済支援策が受けられるのをご存じですか?代表的なのが、「住宅ローン控除」と「すまい給付金」制度です。

「住宅ローン控除」で最大500万円が戻ってくる

「住宅ローン控除」は、住宅ローンを組んで住宅を取得した際、年末のローン残高に応じて所得税・住民税が戻ってくる措置。

ローン残高の上限は4000万円。控除額1%・控除期間10年なので、1年あたり最大40万円が戻ります。なお長期優良住宅・低炭素住宅の場合は最大50万円に(2021年12月31日まで)。

さらに、2020年12月31日までに居住した場合、控除期間に3年分上乗せして控除が可能に(※新型コロナウイルス感染症等の影響で、期限内に入居できなかった場合、特例があります)。

①年末のローン残高(最高4000万円)×1%

②税抜き建物価格(最高4000万円)×2%÷3

①②のどちらか少ないほうの金額が、11年目から3年間控除されます。長期優良住宅・低炭素住宅の場合は最高5000万円。

一般住宅 長期優良住宅・低炭素住宅
年末残高の上限 4000万円 5000万円
控除期間 10年
控除率 1%
最大控除額 40万円×10年 50万円×10年

※中古住宅の個人売買(仲介を通さない)などは、最大控除額(一般住宅200万円など)が適用されます

<住宅ローン控除を受けるためのおもな条件>

【ローンの条件】
借入期間が10年以上

【住宅の条件】
①延床面積が50㎡以上
②新築・購入から6か月以内に入居し、引き続き居住している

【人の条件】
①控除を受ける人の所得が3000万円以下( 給与収入のみなら約3336万円以下)
②居住用財産の3000万円特別控除や買い替え特例を受けていない

現金がもらえる「すまい給付金」

住宅を取得すると国からお金をもらえるのが「すまい給付金」制度。住宅ローン控除が高収入の人ほどトクするのに対し、こちらは比較的低収入者を対象としているのが特徴です。

年収約775万円以下の人が対象で、年収が少ないほど給付額は増加します。給付金が受けられる条件は、床面積が50㎡以上、施工中に第三者による現場検査を受けた住宅であること、住宅ローンを利用しない場合は、年齢が50歳以上で年収の目安が650万円以下であることなど。さらに、2021年12月までに引き渡し・入居完了した住宅が対象となります。

<すまい給付金の給付額目安>

年収額の目安 最大給付額
450万円以下 50万円
450万円超525万円以下 40万円
525万円超600万円以下 30万円
600万円超675万円以下 20万円
675万円超775万円以下 10万円

※表は「夫婦(妻は収入なし)および中学生以下の子どもが2人」のモデル世帯における夫の収入の例

長年にわたって払い続けることになる住宅ローン。無事に完済できるかどうかは、最初の資金計画にかかっています。現在の家計の状況と、将来的なライフプランをしっかりと見据えて、安心して返せる額を見極めていきましょう。

※記載の内容はすべて執筆時点での情報です

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する