以前からデザインや建築に興味を持っていたというSさん。外観の美しい家を建てたいと考え、シャープなデザインの建築に惚れ込んだという建築家・APOLLO一級建築士事務所の黒崎敏さんに設計を依頼します。当然二階建てだろうと思っていた夫妻に提案されたのは、意外にも平屋のプラン。しかし、その模型をひと目見るなり、造形的な魅力や練り上げられた間取りに惹きつけられ、ほぼそのままのプランが実現されました。LDKとひとつながりのような広いテラスでは、子どもたちがサンダルを履かずに自由に遊びまわっています。

LDKと同じ広さのテラス
すべての画像を見る(全14枚)

目次:

開放的なテラスがセカンドリビングLDKは濃淡のあるグレーでシャープに高窓で採光とプライバシーを両立存在感が際立つデザインの外観

開放的なテラスがセカンドリビング

裸足で出入りするテラス

広々とした家を希望していたSさん夫妻。眺望のよい北側に対してLDKとテラスを思いきり開くプラン。テラスの仕上げは室内と同じタイル貼りなので、サッシを大きく開放すればLDKと一体化します。テーブルを出して食事をしたり遊んだり、自在に使える開放的なリビングになりました。

テラスは子どもの遊び場

週末には素足でも出られるようにテラスの掃除をするのがお決まりに。子どもたちは小さな机とスツールを出してお絵描きをしたり、ごろりと横になってトランプをしたり、テラスでのびのびと過ごします。また、来客時にはダイニングテーブルを持ち出してバーベキューをすることもあるそう。

綺麗な夕暮れを望めるテラス

夕暮れから夜にかけての眺望は格別。「空の変化が味わえるいちばん好きな時間帯です」(妻)。また陽が落ちてからは、綿密にデザインされた室内外の照明のバリエーションも楽しめます。

LDKは濃淡のあるグレーでシャープに

グレーで統一したリビング

リビング空間はグレーの塗装で統一して、あえて無機質にまとめました。面によってグレーには濃淡があり、光の反射の仕方や奥行き感の違いが、シンプルな空間を複雑で豊かな表情に見せています。

「テレビ側の壁は暗くなると見えなくなり、暗闇の空間が広がっているように錯覚します。予想できなかった面白い効果も生まれました」とは夫の弁。

高窓のあるダイニングキッチン

ダイニングから視線を上に向けると、南の光をたっぷりと取り入れる高窓が。夜はここから月が見えたりして、日常生活の中で自然を身近に感じられるようになったとか。

グレーの造作キッチン

キッチン収納もキッチンの設備や機器もシャープに収まった美しい造作キッチン。扉の面材も塗装で濃いめのグレーに仕上げました。

こだわりの光る水栓

水栓金具のセレクトにもデザイン好きの夫のこだわりが光ります。

高窓で採光とプライバシーを両立

将来は仕切れる子ども室

キッチンの隣には子ども室を配置しました。将来、真ん中から2部屋に分けられるよう、左右対称の造りになっています。

書斎も兼ねる寝室

寝室には書斎にもなるデスクを造り付けています。クロゼットの扉は枠を見せないつくりでスッキリした見た目に。道路側に面した部屋ですが、高窓にすることで採光を確保しながらもプライバシーは守られています。

余ったタイルを寝室の壁に

ベッドヘッド側の壁には余ったタイルを貼ってクールな印象に。

ガラスで仕切った浴室

そして、寝室の向かいにはサニタリー。寝室と浴室が近いことで動線的にも暮らしやすくなりました。また、洗面脱衣室と浴室はガラスで仕切ることで、より開放的な空間に。浴室は仕上げにこだわりFRPを採用し、夫が欲しかったレインシャワーも取り付けました。

存在感が際立つデザインの外観

隅々まで配慮したデザイン

傾斜の急な法面から跳ね出すようにしてつくられたテラスは、鉄骨で支えられています。坂道を上る途中で目に留まるテラス床の裏面にまで配慮をしながら、丁寧に仕上げました。テラス右下の法面部分には「花を植えたり、何か面白いことをやってみたいと思っています」と夫。

シャープなシルエットの外観

光の表情が幻想的な、道路側から見た外観。照明の光を受けた傾斜天井が高窓に浮かび上がります。シャープなシルエットは夫が望んだ黒崎さんの真骨頂。

「最初は2階がないとその分狭くなるんじゃないかと、少し不安もありました。でも、実際に住んでみると天井の高さや視線の抜け、テラスなどの外部空間とのつながりがあるので、十分な広さだと感じています」と話すのは夫。

「自然を身近に感じられるようになり、外に遊びに行けなくても大丈夫です」(妻)と、家族みんながこの大きなテラスのある暮らしを満喫しているようです。

設計 APOLLO一級建築士事務所
取材/松川絵里
撮影 飯貝拓司
※情報は「住まいの設計2018.01.02月号」取材時のものです