愛知・碧南市の静かな住宅地に建てられたT邸。庭には芝生が広がり、ガラス張りのダイニングが張り出すように建っています。夫妻はともに客をもてなすのが大好き。特に妻は社交的で家には年齢も職業も様々な仲間がよく集まり、ときには講座や演奏会などを開いているそうです。

アイランドキッチン
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目次:

ゲストを迎え入れるガラス張りのダイニングみんなで囲めるアイランド型の高性能キッチンキッチンを軸に、両手を広げたような2つの動線家族それぞれのバースカラーを生かした空間

ゲストを迎え入れるガラス張りのダイニング

家族は夫婦と20代の姉妹。夫の父が所有していた敷地を譲り受け、ゆったりとした広い家を新築しました。
設計は、インターネットで探し、家族で検討した結果、岐阜に拠点を置く建築家・GA設計事務所の玉木直人さんに依頼することに。玉木さんの手がけた事例を見た娘さんが「こんな家に住みたい」と関心を寄せたのがきっかけだったそうです。

新築にあたって希望したのが独立性のあるキッチン&ダイニングルームでした。

外観

敷地は南東に開けた採光性抜群の土地。玉木さんは建物を道路から奥まった位置に寄せ、張り出すようにガラス張りのダイニングを配置しました。

こちらがそのダイニング。開放感たっぷりのダイニングは室内から庭の緑が楽しめ、そのまま外にも出られます。

ダイニング

つまり、庭からダイニングへ直接出入りすることも可能。ガラス張りのダイニングで、外で、「ようこそ!」と夫妻はゲストを明るく出迎えます。

テラス

庭に面したテラスは憩いの場。気候のいい日には、テラスに腰かけてワイワイすることも多いそうです。

ダイニングテーブル

仕上げの床にも注目を。キッチンからダイニング、そしてテラスまで床を磁器タイルで統一しています。それが室内外の広がりと一体感を生み出しています。

集い

この日も家族と気のいい友人たちが集まって、ランチパーティが始まりました。

料理

お料理は見た目も華やかで、品数も豊富。明るい日差しが降り注ぐ空間に、おいしそうな香りが漂っています。

みんなで囲めるアイランド型の高性能キッチン

そしてもう1つ重視したのが、大勢でも囲めるアイランドキッチンです。

キッチン正面

玉木さん設計の家のキッチンは、その大半がF-FURNITURE藤岡木工所が製作。高性能な機器類を備えつつ、ボディの扉を突板仕上げとし、居住空間にしっとりと馴染ませているのが特徴です。T邸ではオークを採用しました。

そしてワークトップは幅2600㎜、奥行き1100㎜のゆったりサイズ。

ワークトップ

広さを生かしてお料理を一気に盛りつけます。盛りつけているのは、人数分のチキンカレーと五穀米のプレート。

ところでスッキリとしたキッチンですが、収納はどうなっているのでしょうか?

料理2

食器などの収納は、壁面をフル活用した造り付けの棚に加え、対面側にある奥行き浅めの棚で万全。壁面収納の裏側には広めのパントリーがあり、ストック品が取り出しやすくなっています。

キッチンを軸に、両手を広げたような2つの動線

T邸は敷地の広さを生かし、キッチンを軸にして、両手を広げるように2つの動線を実現しました。1つがダイニングから外部、もう1つがリビングから玄関、さらに2階を結ぶ動線です。

リビング

リビングはいつでもくつろぐのに最適な場所。ダイニングと雰囲気を変え、床材には白く塗装したオーク材を採用。全体に白っぽい空間の中、パープルの扉がよく映えます。

窓側には薪ストーブが置かれ、ソファの背面には書斎コーナーも。

リビング2

「書斎は階段下を利用した小さいスペースですが、こもった感じで落ち着けます」と夫。

和室

玄関ホールの北側に位置する和室は、ゲストルームでもあり、妻が主催する講座の講師の控え室としても利用されます。オリジナルの障子戸や鳥の子紙を使った建具が温かな雰囲気。

ダイニング2

この家の1階はダイニングとリビングが緩やかにつながりながら、ダイニング側とリビング側、双方にエントランスがある利便性を備えているのです。

家族それぞれのバースカラーを生かした空間

そしてごらんのとおり、2階に配された個室内はとても色彩豊か。実は妻は、バースカラー(生まれ持った本質・気質をカラーで表現したもの)のシニアインストラクターなんです。

寝室

主寝室は、壁とカーテンに妻のバースカラー、パープルを使用。個性的な色合いなのでつくりはシンプルにし、置き家具も最小限にしたそうです。

姉妹の部屋は基本的に個室ですが、引き戸を開ければワンルームに早変わり。

子ども室1

イエローの壁の方が長女の部屋で、ブルーが次女の部屋。

子ども室2

次女の部屋にはユニークな段差がつけられ、いわば「洋風小上がり」です。幸運を予感させるバースカラーは美しい色味で室内インテリアのオシャレなアクセントに。こんな部屋なら日々、元気と安らぎを与えてくれそうです。

最後に浴室回りをご紹介しましょう。

浴室

建物の北西側コーナーに位置するバスルームは、窓の外に小さな坪庭を設けました。湯船から戸外の空気や植栽の緑が感じられるなんて、最高の癒しですね。

浴室

洗面室はバスルームとガラス戸で仕切られ、さらにハイサイドライトを設けて開放感をアップ。パウダーコーナーは、天板とボウルに人造大理石を採用しています。カウンターが広くてとても使いやすそう。

ここまでT邸をご紹介してきましたが、この家からは自分らしい家で過ごすことの幸福感が伝わってくるようでした。

妻はこれまでも行ってきた講座などのイベントをより充実させたいと、将来的な希望も語ってくれました。こんな家なら、妻の希望もすぐに叶いそうですね。

設計/玉木直人(GA 設計事務所)
撮影/日紫喜政彦
※情報は「住まいの設計2017年5月号」取材時のものです