夫の退職金で完済するつもりだった住宅ローンが、定年後まで残ってしまった。この負担が大きくて、毎月赤字続き。それなのに、まとまった退職金を手にして気が大きくなり、海外旅行や高価なバッグなどに浪費して貯金も減る一方…。
このような状態に陥ってしまったらどうすればいいのでしょうか? 今回ESSE編集部では、そんな泥沼にはまった高橋夫妻(仮名)を取材。多額の住宅ローンを残したまま定年を迎えてしまい、毎月赤字家計となってしまった原因と改善方法を探りました。専門家としてアドバイスしてくれたのは、これまで1万人以上の赤字家計を再生してきたファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。はたして、高橋さんの収支、どこが問題?

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住宅ローンが残っているのに、身の丈以上の暮らしで貯金が減る一方…

<高橋さん夫妻の悩み>

退職金で住宅ローンの完済を予定していましたが、定年前後に予定外の出費がかさみ、気がつけば一括返済するゆとりはなくなっていました。夫は継続雇用、妻はパートで働いているものの、住宅ローンの負担(毎月8万7000円)の負担は重く、家計は赤字。貯蓄は減る一方なのに、このまま年金生活がスタートしたらどうなってしまうのか…。不安でたまりません。

●現在の家計

夫の月収(手取り)19万5300円
妻の月収(手取り)3万4000円
収入合計 22万9300円
支出合計 28万6400円

収支 マイナス5万7100円

<これで解決!横山さんのアドバイス>

高橋さんの現在の貯蓄額は約1700万円。ここから住宅ローンを一括返済すると、手元に残るのは700万円と心細い状態になってしまいます。そんなご夫妻におすすめなのは、繰り上げ返済を利用して毎月の返済額を減らす方法。繰り上げ返済にはA「毎月の返済額を変えずに返済期間を短縮する」、B「返済期間を変えずに返済額を減らす」という2種類があります。赤字脱出を目指す高橋さんにおすすめなのは、Bの方法。残債のうち、500万円を繰り上げ返済し、月々の返済額を5万8000円まで減らしました。
また、月々2万4000円もかかっていたクルマ費にも注目。さほど乗る機会がないのに手放せずにいたクルマを処分したところ、31万円で売却できました。残債10万円ほどが負担になってしまいましたが、自動車ローンも完済。自動車ローンは住宅ローンより高金利なので、あまり乗らないのであれば、必要なときだけレンタカーを借りたほうがお得なケースが大半です。

家計のムダを見直しつつ、妻のパートを増やして赤字脱出

さらに、多すぎた自分へのごほうびも見直しました。そもそも、住宅ローンが残ってしまったのは、退職金を計画的に使えなかったのが原因。旅行やバッグ、孫へのプレゼントなどに楽しく使ってしまったのです。月々の金額はそれほど多くはありませんでしたが、家計簿に表れない「特別費」が老後資金を目減りさせるケースも多いので、注意が必要。こうした節約を積み重ねても、まだ赤字から脱却できなかった高橋さん。黒字転換に大きな役割を果たしたのは、妻のパートでした。これまで週2回ペースで働いていましたが、勤務先にシフトを増やしてもらえないか打診され、週4日勤務に変更したところ、妻の手取り月収が7万3000円にアップ。仕事で頼りにされることは生きがいにもつながりました。

●家計改善の結果

住宅費 マイナス2万9000円
レジャー・交際費 マイナス4000円
クルマ費 マイナス2万4000円
交通費 プラス4000円

合計5万3000円を削減!

さらに妻の手取り月収が3万9000円アップ!

赤字脱出
月々3万4900円の黒字化に成功!

もし、黒字分をすべて貯蓄に回すと、年間40万円以上貯められることに。住宅ローンの繰り上げ返済で貯蓄残高は1200万円になってしまいましたが、妻の収入がアップし、生活費も圧迫できたため、夫の継続雇用が終わって年金生活になっても貯蓄からの補てんは抑えられます。

いかがでしたか? 知っているだけで、リタイア生活に大きな差が出る、正しい老後のお金の使い方。今回家計改善に成功した高橋さんは、リタイア後の生活に必要な情報を紹介しているムック

『定年後の暮らしとお金の基礎知識2018』

にも登場しています。こちらもチェックして、スマートに老後のお金の使い方をリサーチし、安心に備えましょう。