主婦業のかたわらエッセイストとしても活動する若松美穂さんが、楽しく、豊かに暮らすためのさまざまな工夫をつづります。

東日本大震災を機に、実の母と同居を始めた若松さん。家族だからといって、最初からスムーズにいったわけではないと言います。
同居生活で感じたことを執筆していただきました。

エプロンを着た女性
※写真はイメージです
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母と私のドタバタ暮らし~この言葉が苦しい~

ある人にとってなんでもない言葉が、ある人にとってはキツいひとことになり、ある人には敏感に反応する言葉になることがあります。
私は母が冷蔵庫をのぞくたび「このお肉早く食べなくちゃ」「これ使っちゃわないとね」と言うのが苦手で、「それ、お願いだからやめて。何度も言っているじゃない」と伝えます。
「そうだった、そうだった」と母も認識しつつ、でもクセなのでしょう。なかなかやめてはくれません。

なにがいけないのでしょう? なにが気になるのでしょう? 私は、自分があわてんぼうでせっかちなところが、イヤです。根は変わらないので、未だ、またやってしまった、ということはあるとしても、今は自分のマイナス点を認識しております。そこで、ひと呼吸置く時間をとる・早め行動や確認を心がけるなど、できる工夫をしているところです。

母と一緒の暮らしのなかから、また交流分析などの心の勉強をしたことで、気がつくことがありました。私のあわてんぼうと焦る気持ちは、小さい頃から「早くする」ことを強要され、「早いことがいい」「早くないとダメ」と急かされてきたからだと。これは母が…というより、家庭全体の空気感だったと思います。

でも私は、もう元の家庭の影響を受けなくてもいい大人です。結婚後の暮らしで、夫や子どもが、私を急かしたりしないのに、クセになっているのです。結果“私自身が私を急かしている”のです。
時々、私と同様の状態を、お客様にもお見受けすることがあります。ご両親は他界されているにも関わらず、「親がこう言っていたから・していたから」と自分を縛り、親の呪縛から抜けられずにいるのです。

私は、母の「早く○○しなくちゃ」「しちゃわないと」を聞くたび、過去の自分に戻るような気分になり、「また急かされた」と苦しく、嫌な気分なります。
せっかく、気持ちにゆとりをもって暮らすことを心がけているのだから、もう、これ以上私を急かさないで! と、私の子どもの部分が叫ぶのです(ちょい大げさだけど、本当、そんな感じなの)。

でも、書きながら思いました。母にしてみればそんなつもりはなく、「今日私はこれを食べましょう、使いましょう」という自分への独り言なのかもしれません。そっか…、そうなのかもしれない。
話すって不思議、書くって不思議です。少しだけ違う見方ができる。この先は、「あっ、また言っているわ。私にじゃなくて、母の独り言だ」って聞き流せばいいのかもしれないな。

【若松美穂(わかまつみほ)】

お金をかけずにセンスと工夫でおしゃれに暮らすカリスマ主婦読者として、生活情報誌『ESSE』や『サンキュ!』などで紹介され人気者に。2011年、心理カウンセラーの資格を取得。主婦業のかたわら、エッセイストとしての執筆活動のほか、講演、各メディアへの出演など多方面で活躍。夫と娘2人、母親の5人家族。埼玉県在住。公式サイト「

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