北欧デザインのなかで高い人気を誇り、ESSE読者からも支持されるスウェーデンの陶器作家リサ・ラーソン(Lisa Larson)。2月23日からは、松屋銀座にて「リサ・ラーソン展 創作と出会いをめぐる旅」も開催されます。

注目を集めるリサの作品の特徴やライフスタイルについて、北欧に詳しいライターのルミコ・ハーモニーさんが教えてくれました。

「ライオン(アフリカシリーズ)」
「ライオン(アフリカシリーズ)」製造1968年‐現在
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88歳の今も活躍中のリサ・ラーソン。そのライフスタイルとは

「犬」
「犬」2000年代

1931年にスウェーデンで生まれたリサ・ラーソンは、デザインコンペで大手陶器ブランド・グスタフスベリ社のアート部門責任者であったスティグ・リンドベリに見出され、23歳という若さでグスタフスベリ社に迎えられました。
1950年代という時代に、女性でありながら、すでに活躍していたのです。

象のティーポット
(C)LISA LARSON

グスタフスベリ社の自由な雰囲気の中で、やさしくかわいいコケティッシュな動物や、素朴で温かみのある表情豊かな作品を生み出したリサ。
88歳となる現在も、自分のペースで楽しみながらユニークピース(一点もの作品)を制作し続けています。

リサ・ラーソン
リサ・ラーソン(スコーネにて)(C)Emma Mattsson

近年では、デザインされたグッズなども人気となっているほか、彼女のライフスタイルにも注目が集まっています。

●「つくることは、生きること。」「生きることは、愛すること。」

リサ・ラーソンの作品集

1950年、19歳のリサは、人生のパートナーとなる有名なアーティスト・グンナルに出会います。

同業者同士のパートナーは難しいとよく言われますが、彼らはアーティストとしてのアプローチが随分違ったため、競争することなく、尊敬しあい、いい影響を与えあったそう。

リサとグンナル
リサとグンナル(グスタフスべリのリサ・ラーソンのスタジオにて)(1960年代)(C)Bo Dahlin

リサ自身、芸術を想像するうえで家族が重要な存在だったと強調し、家族のシリーズも多く制作しています。

夏には、美しい自然のスコーネ地方にあるサマーハウスに毎年通い、家族との幸せな時間や自然がインスピレーションの源になったようです。
日本でも、二拠点生活やデュアルライフと呼ばれ着目されていますが、北欧ではサマーハウスを持ち夏を自然の中で愉しむというライフスタイルは昔からのスタンダード。

3人の子どもに恵まれ、働くママとして多くの人の手を借りながら、育児と仕事の両立を実現しました。3人の子どもたちにアートを強制することはなかったそうですが、それが逆によかったのか、全員がクリエイティブな道を歩み、今では仕事のパートナーとしても活躍されているそうです。

●自立した強い女性をモチーフに

リサの作品は、ただかわいらしいだけでなく、鋭い社会批評も内包しています。

ネコを抱いた女性
「ネコを抱いた女性(ユニークピース)」1959年‐1962年頃

たとえば1950年代の欧米のモードにおいて、女性の体形はウエストがしまっている体型が主流でした。そんななかで、リサはふくよかな女性のシリーズを多数制作しています。

ロッタ
ロッタ(ラーソン家の子どもたちシリーズ)」製造1962年‐1979年

また少女たちが読書している作品も多く制作しました。当時のスウェーデンでは女性が読書することに批判的な空気がありましたが、リサはもっと女性も読書をしたりしていくべきだと考えたからだそうです。

1960年代最後の年には、「社会討論」シリーズを発表しています。女性が男性を持ち上げる図で、男女の力関係が逆転しているシリーズです。
当時はスウェーデンにおいて、女性運動も激しさを増していました。リサはこのシリーズを結婚式用の贈物としてリリースし、商業ベースのギフトとして市場に提案しました。ユーモア溢れるタッチやキャッチーな衣装のおかげで、内包されたメッセージへの理解をより広めることにつながったそうです。