文筆家の藤岡みなみさんは、「所持品ほぼゼロの状態から、毎日1つだけものを取り出して増やしていく生活」に100日間挑戦。ルールはシンプルだけれど、選ぶものには毎日悩み、暮らしと向き合う深い時間が生まれたそう。チャレンジ前はものの多い生活を送っていた藤岡さんが、100日間の中で見つけた、「服」にまつわる気づきを4つ伺いました。

鏡と女性
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1:いつも同じ服を着ていると思われてもなんの問題もない

ハンガーにかかった服

人の目が気になる性格だ。また同じ服着てるって思われたら嫌だな、と常に考えていた。人前に出る仕事も多いので、これはあのときも着たから…と、好きなのにそれ以降封印してしまう服もある。そのくせ、今日会った人がどんな服を着ていたかは全然思い出せない。興味はある。おしゃれだなあ、という感想はもったけれど、思い出そうとすると何色だったかすらよくわからない。

きっと私のような人は多いと思う。よく考えてみると、同じ服を着ていると思われたくないというよりも、自分自身が同じ服を着ることに飽きていたのだった。ものすごく飽き性で、とても気に入って買ったのに2回くらい着たらすぅっとときめきが色あせてしまった、ということが何度もあった。

人の目を言い訳にしていたけれど、本当に向き合うべきだったのはなぜ飽きてしまうのかという自分の問題だったのかもしれない。

また同じ服着てる、といちいち思うほど、おそらく人は他人に興味がない。もしも、また同じ服着てるね、と言われたら「そう、スティーブ・ジョブズ目指してる」とか言っておけばいい。2回で飽きてしまう服をとっかえひっかえ着ているよりも、いつも文句なく好きでいられる服を大事に堂々と着ている自分になりたい。

2:本当に好きな服は毎日着ても飽きない

このことに気づけてよかった。私はどうせ飽き性だから、何度も同じ服を着たら飽きてしまうのが当たり前だ、と感じていた。でも違った。

1日1つずつしかアイテムを取り出すことができないので、なにを選ぶかは時間をかけて真剣に考える。おでこにふわっと浮かんだアイデアではなく、みぞおちの奥から湧(わ)き上がる「我、これを欲す」みたいな要求に耳をすまし、自分と相談してひとつひとつ決めていった。そうやって選んだ服は本当に好きな服だったし、本当に好きな服は毎日のように着ても全然飽きなかった。

ここでいう「本当」とは、自分もまだ発見していなかった真実のこと。まだ気づいていない、というよりまだ生み出していない「真の好き」があった。これまでは悩んでいる時間が無駄だと思っていたけれど、自分に必要かどうか考える時間は、かければかけるほど選んだものへの愛に変わる。悩むことで好きの形がはっきりして、どうして好きなのかがわかると愛着をもつことができる。