ESSEonlineで連載中の、暮らしにまつわるエッセイ「暮らしっく」。身の回りのなんでもないこと、素朴なことを丁寧にすくい上げ、言語化する内容が好評です。このたび連載をまとめたものが書籍化し、11月30日に発売となりました。東京と愛媛で二拠点生活を送る、著者の高橋久美子さんに、作品への思いなどを伺いました。

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“捨てられない物”があっていい。あえて捨てない生き方
高橋久美子
高橋久美子さん
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暮らしってじつはこんなにおもしろい!

――「暮らしっく」の連載も気がつけば3年以上。暮らしを題材にするエッセイを書き続けててきたことで、ご自身の暮らしに変化などはありましたか?

高橋 東京でアスファルトに生えているタケノコを発見したり、ご近所さんから梅をいただいたり、暮らしまわりで起きた何気ないことを書いてきましたが、田舎のような暮らし方って東京でもできるんだなぁと改めて感じたことです。もちろん私は昔からいろんな視点で暮らしを見てきましたが、連載をするようになって、より近くにあるおもしろいものを探すようになり、新たな発見もたくさんありました。

――連載開始から、間もなくコロナ禍に突入したことも、大きな変化になったのではないでしょうか?

高橋 そうですね。緊急事態の中で思うように行動できない日が続き、家のことや近所の人とのやり取りなどに、喜びや楽しさを見出すようになりました。人間って、そんなふうに環境の変化があったら、へこたれずによりよく生きようとしていくんだなと感じました。私だけではなく、コロナは多くの人にとって生活に目を向けるチャンスになったんだと思います。

――忙しくてなかなか生活に目を向けられていなかった人も多かったと思います。コロナによって家にいる時間が多くなり、暮らしを意識する人が増えましたね。

高橋 私もこれまで忙しい生活を送ってきた中で、庭で野菜を育てたり、ご飯をつくったり、家のことを大切にしてきましたが、コロナによってよりその時間が増えたので、改めてすばらしいなと感じました。
だって家の中って本当におもしろいことがいっぱい。おうちで時間をかけて料理をつくって一口一口味わって食べるとか、外の空気を味わいながら洗濯を干したり、そんな時間ってじつは尊い。遠くに出かけることももちろんおもしろいけど、それだけが贅沢なわけじゃない。そんな身近な暮らしの楽しさを伝えたくてずっと書いてきた気がします。