「茶懐石」という言葉をご存知ですか? 茶道流の“おもてなし”である『茶事』の一環です。そもそも茶事とは、お茶を愉しむためのパーティーのようなもので、茶懐石はその中で提供される軽食のこと。敷居の高いものと思われがちな茶道の世界について、茶懐石を入り口に覗いてみましょう。農林水産省が運営する情報サイト「Let's!和ごはんプロジェクト」から、茶懐石にまつわるお話をご紹介します。

そもそも「茶懐石」とは?

●茶事と茶懐石

茶懐石の一例

茶事は通常、亭主が親しい人を招待して行われる少人数のプライベートな集いのこと。そこでふるまわれるのが「茶懐石」です。

もともと懐石とは、修行僧が空腹を凌ぐために、温めた石(温石)を懐に入れたことが語源。遠路遥々やって来たお客様に、茶の湯が沸くまでの間、「おなかを温める程度ですが」と軽食やお酒を勧め、メインであるお茶をよりおいしく飲んでもらおうという心遣いです。

近年では和食のコース料理を懐石と呼ぶことも多いため、茶事における懐石を「茶懐石」と言うようになりました。

●一般的な茶事の流れ

(1) 寄付(よりつき)と呼ばれる待合室でウェルカムドリンクの白湯をいただきながら、身支度を行い、亭主の案内を待ちます。

(2) 手を洗い、口をすすいで茶室の席につきます(席入り)。この時、掛け軸などの設えや茶道具を鑑賞し、調度品について亭主に質問したり、感想を述べたりします。

(3) 亭主が炉に炭を焚べる「炭点前(すみてまえ)」を行い、お湯を沸かすために茶釜を炉にかけます。茶の湯が沸くまでの間、軽い食事として一汁三菜の懐石とお酒が振る舞われます。

(4) 主菓子(おもがし)と呼ばれるお茶菓子が出されます。意外ですが、この時、お茶は出ません。お客様は一旦庭へ出て、お茶の用意ができるまで庭を愛でたり、お手洗いに行ったりします。

お茶とお菓子

(5) 銅鑼の音を合図に茶室に戻り、亭主が立てた濃厚な濃茶が提供されます。この時、参加者一同で回し飲みします。これには、分かち合ったり、茶の仲間として心を寄せ合ったりする意図があるそうです。それから干菓子、薄茶をいただき、終了します。薄茶は銘々のお茶碗で振る舞われます。

 

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自宅で茶懐石を気軽に楽しむ3つのポイント

茶懐石

自宅でも茶懐石のおもてなしの心や精神を再現できたら楽しいですよね。

茶道、茶事の精神は、お客様の顔を浮かべながら、いかに喜んでいただくかを考えておもてなしをすることです。豪華なものというよりも、ちょっとおいしいものや癒しの空間を提供する配慮や気持ちが重要な要素になります。

また、会話を楽しむのも茶懐石の大切なエッセンスです。あなたも“亭主”になって、お客様を招待してみましょう。

●空間のしつらえ

お茶室には季節に応じたお軸(掛け軸)や生花などが飾られています。和室がなくても、食卓にテーブルクロスをかけ、季節のお花を飾るだけでもおもてなしになります。美術品やアートは書に限らず、お気に入りの絵画や写真を飾ったり、お香を焚いたりしてもいいでしょう。

●ご飯は鍋で炊く

ご飯は電気炊飯器で炊く方がほとんどだと思いますが、茶懐石では鉄鍋でガス炊きします。鉄鍋をわざわざ買うのは大変なので、ご自宅にある一番厚手のお鍋で炊いてみましょう。

●お菓子とお茶

地元で人気のお店のお菓子や、有名店のお菓子など、少し物語のあるお菓子を用意するといいでしょう。また、お抹茶は立てられなくても、急須で緑茶を正しくおいしく淹れれば十分です。最高級でなくとも、ちょっといいお茶を用意して、たっぷりと茶葉を使い、適温で淹れるだけで、驚くほどおいしくなります。

「Let's!和ごはんプロジェクト」は、忙しい子育て世代に、子どもが身近・手軽に「和ごはん」を食べる機会を増やしてもらうため、企業等の新たな商品・サービスの開発・販売、子ども向けメニューの展開等を促進するための官民協働プロジェクトです。

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