主婦業のかたわらエッセイストとしても活動する若松美穂さんが、楽しく、豊かに暮らすためのさまざまな工夫をつづります。 今回は、優しいお母さんと他者への「理解」について。

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傘のおじいさん、歩きスマホの若者、自転車ママ、みんな事情がある…のかもしれない

 

車で出かけた雨の日、信号で停車したときのこと。前方を歩いていたご年配のおじさまのビニール傘が、一瞬の強風で折れ、逆さまに広がりました。

 

おじさまは、なんとか閉じようとするけれど風に負け、戻したくても戻せない。仕方なく、傘自体をあきらめた様子。開いた傘を手放し、そばのあき地に捨てていきました。

 

それを見た母「まぁ、捨てちゃだめよ! あれ、だれが片づけるの? 風で飛んだら、だれかがケガをしちゃうじゃないの~」。そうだね、近くに車などがあったら傷がつくかもしれませんし、小さい子にぶつかったら凶器。

 

それは重々承知の上で、私が考えたことは少し違いました。あの細身のおじいちゃん、荷物も持っているし、傘を持ったままだったら、傘に振り回されて、転んでしまうかも…。実際、閉じることのできない傘に体が右に左に揺れて、見ていて危なかった。

 

「だとしても」と母。そう、彼女はそう簡単には引き下がらない。それはいつものこと(笑)。それに、母の言うこともごもっともです。間違えているわけではないのですもの。

 

●歩きスマホの若者にぶつかられてケガをした母

76歳の母
76歳の母

じつはその少し前、母はスマホを持って歩いている若い男子にいきなりぶつかられ、転倒しました。段差がある道だったので、落ちつつ転んだことで頭と腰を打ちつけ、しばらく起き上がることができなかったそうです。

 

股関節に痛みを感じ、病院へ。股関節の不具合は日常生活に支障をきたします。結果、暮らしの中のひとつひとつの動きに倍の時間かかるようになり、リハビリ通いが始まりました。…ってことで、週2~3日、病院の送迎という私の用事が増えました。そんな母は、ケガをしても口だけは達者!

 

「ほらほら、お母さんもそうだったでしょう? 転んだら大変よ」と伝えると、「それもそうね~、傘を離さない方が、あの方には危なかったかしら」。

自分のことと重なると、理解できることもあるのですね。もちろん、壊れた傘の放置がよいわけではなく…。ただ、人には人の事情がある。

 

結論なんてないのだけれど、ほんの少し視点を変えると、腹を立てるから、部分的に「理解することができる」に移行できるのかなと思ったりします。

 

●自転車ママに優しい視線を

 

また別の日。自転車の前後にお子さんを乗せて自転車をこいでいるママが大変そう。「ママもお子さんも危ないわ」と母。優しい人なので、心配をしているのです。

 

「そうね。ただ、移動手段がないんだよ。田舎と違って、車があるのが当たり前じゃないし。危ないもそうだけれど、“頑張っているね”って見てあげたら、優しい視線になるかもよ」

 

時代は変わっています。母世代の言い分は理解しつつ、また別の考え方を母に伝えるのも、次の世代に生きる私ができることのひとつだと私は思っています。

 

ちなみに、私も娘たちに注意されまくりです! 「男」だ「女」だって言っちゃいけない。見た目で判断しないで。ママの時代とは違う。「今」はこうなの! ってね。

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