持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。今回のテーマは「アート」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできることについてつづってもらいました。

電子ゴミアート
NAGASAKA MAGO Exhibition Still A Black Star/We Are Same Planet~私たちは繋がっている~日本橋三越にて(筆者撮影)
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電子ゴミアート、アウトサイダーアート…
多様性を楽しむSDGsなアート案内

秋もすっかり深まってきました。
スポーツがあまり得意ではない私は、秋と言えばもっぱら食欲の秋か、芸術の秋。絵を見るのは大好きなので、ちょくちょくアート展に出向いては、ひとつとして同じものがない色や形の多様性を楽しんでいます。その中にSDGsに通じるアートもあるんですよ!

●電子ゴミを使ったサステナブルなアート作品

10月に足を運んだのは、都内の百貨店で開催されていた長坂真護さんの作品展。
長坂さんは、先進国が捨てたパソコンやゲーム機器などの電子ゴミが、遠いガーナ共和国のスラム街に大量に送られているという事実に衝撃を受け、これらの電子ゴミをアート作品に昇華させている気鋭の美術家です。

電子アート作品
NAGASAKA MAGO Exhibition Still A Black Star/We Are Same Planet~私たちは繋がっている~日本橋三越にて(筆者撮影)

フジテレビのSDGsをテーマにしたミニ番組「フューチャーランナーズ」で取り上げたことがきっかけで知ったのですが、彼は作品の収益でガーナを救う! と宣言し、スラム街に初の学校をつくるなど、本気で動き出しています。

電子ゴミアート展覧会
NAGASAKA MAGO Exhibition Still A Black Star/We Are Same Planet~私たちは繋がっている~日本橋三越にて(筆者撮影)

どこかチャーミングな作品の裏に潜む大量生産・大量消費社会に対する強いメッセージは、見る人の心にダイレクトに訴えかけるものがあります。

作品を紹介する男性
フジテレビSDGsイベント「未来を変えるFUTURE TALK」での長坂さん

「ゴミを使ったアートは、昔は“ジャンクアート”と呼ばれていたけど、これは“サステナブル・アート”。これからは、サステナブルがキーワードになる時代が来る!」と直感的に感じていたという長坂さんがめざすのは、サステナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)。「芸術をとおして地球をきれいにしたい」 そんな思いで活動を続けています。

●生命力に満ちた障害者によるアウトサイダーアート

次に触れたのが、アウトサイダーアート。聞き慣れない言葉かもしれませんが、美術的な専門教育を受けてない人によるアート作品のことで、アール・ブリュットとも呼ばれています。

並んだアート作品
Art of the Rough Diamonds 2020年の展示イベント(筆者撮影)

日本ではまだ大きな市場になっていませんが、海外ではかなり認知されていて、世界的に有名なクリスティーズでは、アウトサイダーアートのオークションなども開催されています。

日本でもアウトサイダーアートをもっと広め、その作品価値を高めようと活動しているNPO団体があるので、取材もかねて作品展示を見に行ってきました。

 

犬や猫の絵
Art of the Rough Diamonds 2021年の展示イベント(筆者撮影)

企業のエントランスロビーで「アート・オブ・ザラフダイヤモンド」が毎年行っている障害者アート展です。その名のとおり、ダイヤモンドの原石のような作品の数々がずらり! 荒削りかもしれないけど、自由でどれも生命力に満ちていて、見ているだけで元気をもらいます。

障害を持つ方の中には、自分が伝えたいことを絵という形でアウトプットするようになってから、心が安定したり以前より上手に話すことができるようなったりしたアーティストもいるそうです。気に入った作品がサイトから購入できるほか、企業ロゴや商品パッケージをアウトサーダーアーティストにオーダーすることでもできるそう。

また、障害者アートをバッグやスカーフ、ネクタイなどにプリントして魅力的な商品にしている「ヘラルボニー」というブランドもあります。

並べられたアート作品
2021年7月14日放送「フューチャーランナーズ」より

彩り豊かでカラフルなものが多く、プレゼントにもよさそう。福祉施設とライセンス契約を結び、売り上げの一部を障害のある作家に還元しています。

アートを通じて皆さんができることもたくさんあります。

【皆さんにもできること~アート編~】

・社会貢献にもつながるアートに触れてみる
サイトで楽しむ
・アウトサイダーアートを見に行ってみる(専門の美術館もあります)
・自分の生活にアウトサーダーアートを取り入れてみる
・オフィスや会議室などにかざってみる
・オンライン会議の背景に使ってみる
・障害者アートがプリントされたバッグ、スカーフなどを購入してみる
・障害者支援につながる商品をプレゼントする
・アウトサイダーアートの魅力を人に伝えてみる

●フジテレビの会議室にはカラフルな自閉症アーティストの作品が

私が働くフジテレビCSR推進部の会議室には、20歳の自閉症アーティストGAKUの作品が飾られています。

会議室

GAKUも番組でとりあげた一人ですが、動物シリーズをはじめ、色鮮やかなアート作品が空間を明るくしてくれます。自分がもっと多くの人に知ってもらいたいと思い飾ったのですが、そこから話題が広がり、会議が和むという思わぬ効果も…。

絵を持つ男性と女性
アトリエでGAKUさんと

先日オープンしたばかりのギャラリーは、ピンクのフロアに大小様々なGAKUの作品がたくさん! ご興味がある方はサイト「byGAKU」をご覧ください。

絵と女性

専門的な美術の教育を受けていない方が描いた作品だって立派なアート。多様性を尊重する社会は、SDGsがめざすゴール10「人や国の不平等をなくそう」にもつながります。皆さんも、ぜひそんな切り口で多様なアートにふれてみてはいかがでしょうか?

【SDGsの課題をみんなで一緒に考える 楽しくアクション! SDGs】

詳しくは公式サイトをご覧ください。

【フジテレビ『フューチャーランナーズ』放送中】

SDGsを推進するため、ゴールに向かって奮闘している人たちを取り上げる番組。
毎週水曜22:54~23:00放送(関東ローカル)
公式サイトですべての放送回を見ることができます。

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