漫画家の瀧波ユカリさんが、ESSE読者の悩みに答えます。
今回は「母の愚痴につき合うのがつらい」というお悩みについてです。娘として、どこまで向き合うべきなのでしょうか?

イラスト母の愚痴
母の愚痴に辟易
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年のせいか、愚痴ばかり言う母。聞いていると気が滅入ってしまう

【お悩み】

実家の近くに住んでいて、母とはランチしたり買い物に行ったり仲よくしています。年のせいなのか、母は愚痴を言うことが増えてきて、会うたびに延々と聞かされるのが憂鬱です。ご近所や親せきのなにかが気に入らないとか、父への不満とか。「そんなこと気にせずスルーすればいいのに」と思うような小さなことも多く、聞いているとこっちまで気が滅入ってきます。うんうんと聞くだけしかできませんが、なにかアドバイスした方がいいのでしょうか?(Oさん・埼玉県・46歳、夫46歳、長女17歳、二女15歳)

【瀧波さんの回答】

親が吐き出す愚痴を、ただうんうんと聞いてあげているんですね。それはとても優しい部類の親孝行であるとともに、大変な苦行であると私は思います!

●愚痴を受け止める側にはいいことなんてない

お母さまはおそらく、解決したい問題があるわけではない。不満が蓄積して限界に達しているわけでもない。アドバイスを求めているわけでもない。日常で感じたちょっとしたモヤモヤを自分で処理するのが面倒だから、気を使わなくていい相手の前で吐き出しているだけ。幸いなことに相手は親身になって聞いてくれるし、なんなら同情や心配までしてくれる。すっきりできるし、優しくされて気分もよくなる! 愚痴って、吐く側にとってはいいことずくめなんですよ。

でも当然、愚痴を受け止める側にはいいことなんてなにもないです。高めの時給をもらわないと割に合わないくらい、退屈だし気が滅入るし忍耐力が必要な作業です。なにより最悪なのが、愚痴を吐く側は相手が神経をすり減らして聞いているなんてまったく思ってないし、感謝すらされないことです。報われなさが半端ない!

イラスト私はじゅうぶんやっている!

なので、「愚痴をただ聞いてあげることが私のできる唯一の親孝行だ! これさえがんばれば、いつ親が死んでも私はよくやったと思えるし、後悔しないはず!」と思えるのであれば、愚痴聞きをがんばるのもアリです。状況としては、余命わずかだったりね。

でも、親孝行の方法はほかにもあるから愚痴聞きに全振りする必要はないし、気を滅入らせてまで続けられない! と思うなら、あなたの気分次第でつき合ったりつき合わなかったりで全然いいと思います。

●適当に返事をしていいんです

愚痴につき合わないコツは、返事を適当にすること

です。スマホを眺めながら「ふーん」「そうなんだ」と雑な相づちを打ちましょう。また、そうすることに罪悪感をもたないでください。愚痴はコミュニケーションではなく、一方的にぶつけられるものですから、それをどう扱うも本来は自由です。
もちろん「愚痴うざい」ときり返したり、「聞いてらんないわ」と言い捨てて茶の間を飛び出してもいいんです。だから適当に返事してやってるだけ偉い、くらいに思ってください。

ときには「愚痴なんて言わないで、もっと楽しい話をしようよ」といさめてみるのもいいでしょう。しかし、期待することは禁物です。人はそう簡単に変われません。お母さまが変わることをあなたが望めば望むほど、今度はいら立ちや失望を感じることになるでしょう。
愚痴に時間を費やすか、楽しく過ごす方に目を向けるか、選択するのはお母さま自身。ときどき聞いてあげるだけで、あなたは十分やっているのですから、それでよしとしましょう。応援しています!

【瀧波ユカリさん】

1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『

30と40のあいだ

』(幻冬舎刊)『

ありがとうって言えたなら

』(文藝春秋刊)など。