グラフィックデザイナーの西出弥加さんと光さん夫妻は、夫婦ともに発達障害という特性をもちながら結婚。そして、結婚早々から別居という道を選んでいます。
昨年はコロナ禍もあり、実際に会った回数は4回。離れて暮らす現在の2人をZOOMで取材をしました。

マスクをつけた男女
離れて暮らす光さん、弥加さん夫妻。今回は子どもについて伺いました
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発達障害の私たちが子どもを持たない理由。そこにはお互いを思いやる心があった

妻の弥加さんがASD、夫の光さんがADHDの発達障害の特性をもっています。東京に住む弥加さんはグラフィックデザイナーの仕事を、愛知県に住む光さんは訪問介護の仕事をしながら、それぞれが一人暮らしをしています。
そんななか、妻の弥加さんは、プラトニックな関係を築く「ポリアモリー」として複数の恋人がいることをカミングアウト。夫のほかに恋人がいることを、夫の光さん自身も許容しています。今回は、光さんの考えを深堀りしつつ、多くの人から聞かれるという子どもについて教えてもらいました。

●妻の恋人に対して夫は「むしろ救いになっている」

――妻の弥加さんの恋人について、夫の光さんは許容されているそうですが、光さんご自身は外で恋人をつくろうと思ったことはないのでしょうか?

:まったくないですね。そもそもの話なのですが、じつは僕が恋愛や性愛に対して興味が薄いというのが前提にあります。弥加さんは、よくこんな僕といてくれるなと思うときがたくさんあります。結婚前に彼女がいたこともありますが、みんなことごとくセックスレスになってしまい、かなり悩ませてしまっていました。僕の元々の気質なので、カウンセリングに行ってもまったく変わらず、ちゃんと相手のことは好きだけど本当にそっちのことに欲が出ないというか。それもあって結婚や恋愛を考えると、かなり落ち込んで寝込んでいたこともあります。そのことで、いざこざが起きなかったのは、たった一人、弥加さんだけです。僕に対して、僕が悩むことを自然に求めてこない人でした。それが本当に救いでした。

あと、弥加さんと出会って「恋人が複数いる」と聞いたとき、そこに嫉妬心が芽生えるとかじゃなくて、素直に「すてきな関係だな」って思いました。

弥加

:私が自分のことを話すとき、「これは他者から見たら変わった考えだよな」と思いながら話すのですが、いつも光くんは自然に肯定してくれて、本当にうれしいです。

:昔つき合った彼女たちのように、相手を悩ませてしまうのが一番つらい。でも弥加さんにはそれがなかったし、恋人たちのことを楽しそうに語っているのを聞くのも、僕もうれしくなる。奥さんが外で恋人をつくっているというと、「一途な旦那さんがかわいそう」「夫婦としてフェアじゃない」という意見が出てくるのですが、全然そんなことはないです。今の関係が理想でした。むしろ僕のほうが、かなり変わっているかもしれないです(笑)。お互いに、この相手じゃないと成立しない結婚だったと思っています。

弥加

:仮に光くんにも彼女ができたとしたら、私は喜んであいさつに行きたいです。こういう感覚がお互いに似ていたからこそ、結婚しようと思えました。

:弥加さんはあまり性愛を築かないと言ってたけど、だれかと築いてくれるなら、それはそれで僕は助かります。“男性性”を大切な人に求められることが僕は本当に怖いし苦痛なので。

弥加

:私はとにかく、夫である光くんが不快に思うことはしたくないです。