日本では、家族以外の人々が生活をともにするシェアハウスが流行していますが、さらにもっと大きな共同体である「コミューン」についてご存知でしょうか。

フィンランド人の夫をもち、海外の暮らし事情に詳しいルミコ・ハーモニーさんに、実際に訪れたブラジルのコミューンについて語ってもらいました。

ブラジルやデンマーク…世界の興味深いコミューン

●フィンランドのブラジル移住コミューン・ペネド

ブラジルで暮らしていたとき、「リトル・フィンランド」と呼ばれるペネドという地域を訪れたことがあります。

建物の前にベビーカーを押す子ども
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場所は、リオデジャネイロとサンパウロのちょうど間。
100年以上前、まだフィンランドがロシアに占領されていた時代、一部のフィンランド人が理想の暮らしを夢見てブラジルに移住し、理想のコミューンをここに築きました。

写真
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コミューンに参加したい希望者を募って面接を実施し、医者や料理人など、そのコミューンだけで独立した生活が送れるようにとメンバーを厳選したそうです。
結局、1927年から1940年にかけて、296人のフィンランド人がリオデジャネイロ港に到着し、移民として208人が登録したといいます。

ダンスをする男女
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現在もコミューンは健在。
6月の夏至祭のタイミングに訪れたところ、フィンランド本国でも目にすることが難しくなったような、民族衣装に身をまとった伝統的なダンスが繰り広げられていました。
フィンランド人の夫も、「フィンランド本国ではほぼ廃れている文化が、タイムカプセルのように残っている」と興奮していました。

自分たちのアイデンティティと共同体保持のために、伝統音楽と踊りが非常に有効的だったと、現地の方が話していたのが非常に印象的でした。

●デンマークのクリスチャニア

世界にはほかにもユニークな共同体があります。
たとえば、デンマークにある、ヒッピーたちの自治地区「クリスチャニア」。首都コペンハーゲンに1971年に誕生し、現在まで続いています。人口は1000人ほど。

デンマーク政府の関わらない独自のルールをもち、国旗や国歌までが制定されているクリスチャニア。そのルールとは、「暴力禁止」「武器の持ち込み禁止」「車の乗り入れ禁止」「ハードドラッグ禁止」など9項目。

こう聞くと閉鎖的な空間のように思えるかもしれませんが、じつは毎年50万人の観光客が訪れる、コペンハーゲンで4番目に大きな観光地です。

●コミューンを舞台にした映画

2月8日から14日まで開催される北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル 2020」では、『ザ・コミューン』というデンマーク映画が上映されます。

映画『ザ・コミューン』
(C)Danish Film Institute

舞台は1970年代のコペンハーゲン。大きな屋敷を相続した主人公夫婦が、年齢・階級が異なる人々を迎え入れ、共同体(コミューン)で暮らすさまを描いた映画です。

この映画は、監督が実際にコミューンで育った経験が投影されているそうです。
メンバーを決定する際には全員が手を挙げることが条件だったり、男女かまわず「家族」として全裸で楽しむ様子があったりと、独特のルールや暮らしぶりが、興味深いものでした。

日本ではなかなかなじみのない、コミューンというカルチャー。興味をもたれたら、ぜひ映画もチェックしてみてください。