厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の平均年間収入は243万円。
母子家庭のおもな雇用形態は、半数以上がパート・アルバイトなどの非正規。子どもが小さくて時間の融通が利かず、フルタイム勤務が難しいという事情が伺えます。また、元夫から子どもの養育費や学費が払われないというケースも。

ここではESSE読者のリアルなエピソードと、専門家のアドバイスをお届けします。

親子が手をつないでいる様子
子どもを連れ、逃げるように家を出たけど…(写真はイメージです)

正社員の職を得るも、本の出版の誘いがきて退職。安定かやりがいかで悩む

<岩間早紀さん(仮名)プロフィール>
千葉県・38歳
長男12歳、二男8歳
年収 210万円
養育費 0円
9歳年上の夫と離婚。児童手当を月額2万円、児童扶養手当を月額2万5000円受給中。さらに学校給食費免除、医療費無料、学用品などの補助援助も受けている。貯金はできていない

6年間の結婚生活にピリオドを打ったのは、上の子が小学校に入学する春のことです。

元夫は、定職に就かず、家ではゲームばかりやっていて、子どもには少しも興味がないようでした。子どもっぽくて感情的なため、子どもたちは父親を嫌い、怖がっていました。長男には発達障害があるのですが、育児にはまったく協力せず、結婚生活を続けることへの疑問が私のなかでだんだん膨れ上がってしまったのです。それで、ある日、子どもを連れて逃げるように家を出てしまいました。

一方的に逃げ出したので、慰謝料や養育費はゼロ。でも、家賃の安い市営住宅に住み、仕事を少し増やせばやっていけるんじゃないか、という読みはありました。ところが、当てが外れてしまった。市営住宅への入居は、母子家庭なら優遇されると聞いていたのに、市役所の窓口の人は「あ、あいてないですね」とアッサリ。とても冷たい対応に落胆しました。

母子生活支援施設への入居も考えました。ここなら家賃はかからないし、光熱費などもみんなで折半するから安くすみます。
ただ、大きな問題がありました。それは、支援施設は子どもの学校の学区外にあり、転校させなければならないこと。また、門限もあり、集団生活が基本であることを考えると、発達障害のある長男にはとても難しいと思いました。

それからもうひとつ、施設で家賃のかからない生活を続けたら、その生活に慣れてしまい、ダメになってしまう気がしたこと。福祉事務所で言われた入居期限は4年。退居する頃には私の年齢も高くなってしまう。それよりも今から自力で生活できるようにしておいた方がいいのではないかと考えたのです。

●安定した仕事か本当にやりたい仕事か

というわけで、アパートを探しましたが、現実の壁は厳しくて。パート勤務のシングルマザーでは、どこも貸してくれないのです。

結局、友達のお母さんにアパートを借りてもらい、私がその人に家賃を支払う形で引っ越すことができました。大家さんも不動産屋さんもこの変則的な借り方を理解してくれました。涙が出るほどありがたかった。

仕事は、まずは結婚当時からやっていたパートの事務仕事を増やし、その後ハローワークに行き、仕出し給食の会社の正社員の職を得ました。収入は増え、住宅手当と子ども手当が会社から出るため、ゆとりができ、毎月少しずつ貯金ができるほどに。

そんな矢先、もともとインテリアが好きでブログから情報発信していた私のところに、本の出版の話が舞い込んできたのです。