明るい青年から、影を抱えたような役柄まで、幅広く演じる林遣都さん。出演舞台の見どころをはじめ、いい仕事につなげるための日々の習慣を教えてくれました。

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林遣都さん
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林遣都さんインタビュー

10代から映像の世界をメインに活躍してきた林遣都さんが、初めて舞台に立ったのは5年前。「じっくり時間をかけて、貪欲にお芝居と向き合える」ことに魅力を感じ、コンスタントに出演するようになったと話します。

「それ以来、観客としてもよく観るようになりました。劇場は日々のいろんなことを忘れて、非日常へ連れて行ってくれる特別な場所だと思います。体ひとつで行う表現、音や光、美術によって、想像を膨らませてくれる。なくなってはいけない空間だと感じています」

●劇場は“非日常”を体験できる特別な空間

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舞台の仕事は、林さんにとっては、「鍛錬の場」。とくに稽古の時間が大好きで、「いつまででもやっていたい」と思うほど。

「今年1月に出演した舞台『フェードル』では、共演した大竹しのぶさんたちと、稽古時間を過ぎてもずっと作品や役、お芝居の話をしていて。なんて充実した時間なんだろう、と幸せを感じていました。もともと僕は自分からコミュニケーションを取るタイプではないんです。でも勇気を出して話しかけることで成長できると信じて、稽古場では積極的に自分をさらけ出すようにしています」

そんな林さんが9月から挑むのが、作家・安部公房の戯曲をもとにした舞台『友達』。ある日突然、主人公が暮らす部屋に人の家族が入り込んできて、じわじわと生活が脅かされていく…というストーリーで、林さんは謎の家族のひとりである長男を演じます。

「いわゆる“不条理劇”と呼ばれる、ちょっと不気味な雰囲気のなかで進んでいく作品です。見る人によって解釈が異なるのも、この物語のおもしろさなので、しっかり共演者の皆さんと解釈を共有して、舞台をつくっていきたい」

勝手に主人公のお金やもち物を使ったり、家族のふりをしたり…と理不尽にふるまう家族のなかで、長男は「もっとも攻撃的な、悪の要素をもつ人物」。穏やかに話す姿とは正反対のイメージですが、ギャップのある人物を演じるのも演技の醍醐味だと話します。

「自分とはかけ離れたところで感情を解放するのは、俳優にとってはいちばんの快楽かもしれません。そういう役は、演じていてやっぱり楽しいです」

●20代半ばまでは家事が苦手だった

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30代になって、苦手だった家事にも取り組むように

昨年、30歳の節目を迎えたことで「仕事に対する意識がそれまでとは変わってきた」という林さん。

「20代の頃はどこかに『評価されたい』『いい作品に出たい』という野心があったんです。もちろん今もその気持ちはあるけど、それとは別に、『自分の演技でだれか人でも喜んでくれたり、元気になってくれる人がいるなら、これ以上幸せなことはない』と感じるようになって。きれいごとかもしれないけど、これからはもっと多くの人に、そう思ってもらえる人間になりたいです」

仕事だけでなく暮らしについての考え方も、年齢とともに変化が。

「20代半ばまでは家事が苦手だったんですけど、それではダメだな、と。仕事の目標が上がれば上がるほど、おのずと私生活も大事にしなければと思うようになりました。ただ、これは俳優の仕事の難しいところなのですが…。ちょっと体調が悪いときの方が、いいお芝居ができるときもあるんですよね。

たとえば今日のような撮影も、1週間前から体調に気をつけて現場に来ると、なぜか妙に緊張してしまったりして。逆に、前日にちょっとお酒飲みすぎちゃったな…くらいの方が、リラックスしてできることがあるんです(笑)。自分にとってなにがベストなのか、その都度模索しています」

●寝る前の「瞑想」で睡眠の質が上がりました

とくに今回の舞台は暑い時期の公演とあって、スタミナをつけるための食事も重要に。

「アスリート、と言うとオーバーかもしれないですけど、舞台は本当に体力勝負で。毎日万全の状態で臨むためにも、なるべくお肉を食べるようにしています。正直、あまり料理は得意ではないのですが、どうしても食べたいものがあるときは、レシピを見つけて“完コピ”することも」

最近、愛用するようになった「瞑想アプリ」も、心身を整えるために始めたことのひとつ。

「ヒーリングミュージックと一緒に声が流れてきて、自分を振り返ったり、余計な雑念を消したりできるよう導いてくれるんです。試しにやってみたら睡眠の質が高まって、寝る前の習慣になりました」

そうしたオフタイムの時間も大切に使って、「日々の成長につなげていきたい」とまっすぐに語ってくれた林さん。歳の節目を迎えた今、一段と魅力的な姿を見せてくれそうです。


【林遣都さん】

1990年生まれ、滋賀県出身。2007年、映画『バッテリー』でデビュー。近作に映画『犬部!』、ドラマ『ドラゴン桜』など。待機作に映画『護られなかった者たちへ』『恋する寄生虫』。9月3日より東京・新国立劇場小劇場にて舞台『友達』に出演。共演は有村架純、鈴木浩介ほか